日本肢体不自由教育研究会
 

肢体不自由教育 No.177

地域支援の輪を広げる

 現在、各地で養護学校による、地域の障害のある子供への支援が展開されています。今回肢体不自由養護学校による地域支援についての特集を組むにあたり、その主役である子供たちが、それらの支援によってどれだけ具体的に成長・変化しているのかを問うものにしたい、と考えました。
 そこで、ご執筆の先生方には、これまでに肢体不自由養護学校で蓄積されてきた指導技法の活用や支援の実際について、より具体的に記述いただくとともに、子供たちの成長・変化等についても、その様子がより分かりやすくなるようお願いしました。
 それぞれの論文からは、支援する側の先生方の専門性の高さを感じるとともに、支援を受ける側の保護者と教職員の熱意を感じます。この両者がしっかりと連携、協力することが、地域支援の中心にいる子供の成長に結びつくのではないでしょうか。本号が、各地域で障害のある子供への支援の実際に役に立ち、一人一人の子供たちの成長につながっていけば幸いです。
(川部智子)

 

・特集
地域支援の輪を広げる

地域の障害児通園施設や小・中学校に通う障害のある子供たちに対し、養護学校による支援をどのように展開していくかについて、実践をとおして迫ります。
・巻頭言
コンサルテーションとしての地域支援
宮普@昭
山形大学大学院教育学研究科教授
・論説
「自分らしい暮らし」をプロデュースするために
―「協働」による地域生活支援の展望―
加瀬  進
東京学芸大学特別支援科学講座助教授

教育行政からみる障害のある子供への地域支援
―島根県における支援体制整備の取組―
児山 治正
島根県教育庁高校教育課特別支援教育室長
・実践報告
就学前通園施設への支援
保坂 俊行
山梨県立甲府養護学校教諭
地域の小学校に在籍している児童への支援
小川 浩三
山口県立防府養護学校教諭


地域の小・中学校に在籍する子どもへの支援―センター的役割の展開―
橋本 正巳
兵庫県川西市立川西養護学校教諭


保護者・幼稚園・小学校をつなぐ継続的な支援を目指して
久保田 純
長野県稲荷山養護学校教諭
 
・研究大会報告
第三十回記念日本肢体不自由教育研究大会を終えて
池田 敬史
東京都立あきる野学園養護学校長
研究大会参加者の声
 
・連載講座
肢体不自由児の「数の指導」(三)
川間 健之介
筑波大学大学院人間総合科学研究科助教授
・講座Q&A
就学の場
・人物紹介
藤田貞男先生と肢体不自由教育
鷲野 正昭
元愛知県立小牧養護学校長
・福祉制度の基礎知識3
障害者自立支援法に基づく日中活動について
朝日 雅也
埼玉県立大学保健医療福祉学部助教授
・ちょっといい話 私の工夫
簡単プレゼンテーション 作製ソフトEhon
梶原 勝則
福岡市立今津養護学校教諭
・医療的ケアの最前線
子供の笑顔を支える連携の輪と和―医療的ケアの取組―
鵜野 茂子
富山県立富山養護学校教諭
・特別支援教育の動向
福島県の特別支援教育の現状と展望
高屋 隆男
福島県教育庁教育指導領域特別支援教育グループ指導主事
・読者の声
今、自分にできること
橘 英之
熊本県立苓北養護学校


 Aさんの笑顔はとっても素敵でした。病院内訪問教育からスタートしたAさんは、どんどん体力が付き、終日学校へ登校できるようになりました。教師が犬にかまれた話をすると、涙を流して心配してくれる、Aさんはとても優しい性格でした。これからますます持っている可能性を発揮してくれるだろうと感じているとき、私は国立特殊教育総合研究所での一年間の長期研修に参加する機会を得ました。様々な専門的な研修に取り組む中で、子供たちに対し、あんな取組やこんな取組ができるのではないかと日々感じる毎日でした。そんな折り、突然届いた思いもかけない知らせ。Aさんの一生は、家族や色々な人たちからたくさんの愛情を受け、充実した日々だったでしょう。しかし、自分自身Aさんに何ができたのだろうと自戒し、子供と接する一瞬を大切にしていかなければならないと痛感する毎日でした。
 現在、学校現場に戻り、子供たちの生き生きとした表情に出会っています。反面、本当に子供たちの思いに応えることができているのだろうかと葛藤が続く毎日でもあります。
 そんな中、本誌第173号での「自立活動―授業の再検証」の特集を読んで、今できることは、日々の実践を丁寧に振り返り、実践を積み重ねていくしかないと感じました。本校においても個別の指導計画の作成や評価を複数の教員で行っていますが、複数の視点で日々の授業を再検証し、子供の評価とともに教師側の評価も厳しく行っていく必要性があると感じました。本誌における様々な特集を今後の実践に生かしていきたいと考えています。


保育園と養護学校の協働
齋藤 亮一
福井県立清水養護学校

 本校が取り組む「地域の小・中学校や保護者からの相談」「保育園での相談」の中から、ここでは、保育園での相談を紹介します。
 小学校で相談を受けた児童の育ちをさかのぼると、保育園のころから「気がかり」な状況があったことが分かります。保育士は子供が2歳ころから何らかの「気がかり」を感じ、3歳ころにはそれを確信できると聞きます。早期に「障がい」や「支援ニーズ」に気づき、保護者と保育士、養護学校の教育相談や関係諸機関が連携して子供の育ちを支えることができれば、「障がい」があったとしても、二次的障害を予防できるかもしれません。保育園での相談を通して、保育園が、「障がい」のある子とない子が互いを認め、助け合いながら自然に生活する、双方にとってすばらしい「学びの場」になっていることを実感しています。教育相談のスタッフは、実際に保育に参加しながら、「障がい」のある子を含めた「気がかりな子」へのかかわり方や養育について保育士や保護者と共に考えています。
 また、「就学」をどうするかが「障がい」のある子や保護者、保育士にとって大きなハードルです。保護者が心穏やかに子供の状況や就学に向き合い、そして何よりも子供自身が生き生きと学ぶことができる環境を整えることが就学支援として大事なことです。
 そこで、本校では、保護者や保育園と「就学支援シート」を作成し、就学先の学校との「就学支援会議」をコーディネートしてきました。支援会議を行ったケースについては小学校入学後も継続して相談を行っており、その取組は徐々に広がりつつあります。
 保育園や小・中学校、養護学校が互いの役割を理解し、養護学校の子供たちを含めた「地域」の子供全体の育ちを協働して支えていけるよう努力しています。
・図書紹介
『〈ことば・文字・数〉基礎学習の教材づくりと学習法』
進 一鷹 著


『医療的ケア―あゆみといま,そして未来へ―』
大阪養護教育と医療研究会編著
■トピックス
■次号予告
■編集後記