日本肢体不自由教育研究会
 

肢体不自由教育 No.182

基本から学ぶ摂食指導

 私が教員になった約20年前は、摂食指導が各学校で行われるようになったばかりのころでした。まずは安全に食べさせることに重点をおき、介助する時の頭の位置や食べさせるときの一口の量を、先輩教員から必死で習いました。
 そのころのことを振り返ると、鈴木和彦氏の巻頭言に想いが重なります。
 今回、六年ぶりに摂食指導の特集を組みました。いつになっても基本が大切と考え、芳賀 定氏には平成13年度発行の第151号に引き続き摂食指導の基本を論じていただきました。今回は実技編として、具体的な指導法が解説されています。
 実践報告では、組織やチームで取り組んでいる指導の報告をいただきました。校内の連携はもとより、保護者や外部専門家との連携の必要性が理解できました。
 子供一人一人に合わせた摂食指導は、時には基本どおりに行かないこともあります。しかし何を大切にしていくのか、本特集号を繰り返し活用し指導の充実を図っていただきたいと願っています。

(武 井 純 子)
 

・特集
基本から学ぶ摂食指導

障害の重い子供への摂食指導の基本を学び、学校での指導や研修にどのように取り組んでいけばよいのか、具体的な事例を通じて迫ります。
・巻頭言
「食べるということ」の意義を改めて見直して
鈴木 和彦
東京都立墨東養護学校校長
・論説
摂食・嚥下機能の発達と段階に応じた支援方法
芳賀  定
芳賀デンタルクリニック院長

障害のある子供の食事指導における姿勢及び上肢機能の発達
西方 浩一
文京学院大学保健医療技術学部専任講師
・実践報告
過開口・舌突出のある児童の事例報告―実践からの学び―
引地 隆一
東京都新宿区新宿養護学校教諭

食べる機能を伸ばす食形態への取組
上村 由理
長崎県立諫早養護学校栄養士


末松 泰子
長崎県立諫早養護学校教諭

学校組織として取り組む摂食指導
眞部 知子
福島県立郡山養護学校教頭
・研究大会報告
第31回日本肢体不自由教育研究大会を終えて
池田 敬史
東京都あきる野学園養護学校校長
研究大会参加者の声

・図書紹介
『医療的ケア研修テキスト 重症児者の教育・福祉、社会生活の援助のために』
・連載講座
障害の重い子供の「学習評価」(2)
古山  勝
千葉県立銚子特別支援学校教諭
・講座Q&A
作業学習
・人物紹介
私と肢体不自由教育の出会い
―昭和三十代初期の東京教育大学教育学部附属桐が丘養護学校―
青柳 勝久
元東京都立北養護学校校長
・上肢操作の基礎知識3
触覚と巧緻性の発展
関内美奈子
彰栄リハビリテーション専門学校専任講師
・ちょっといい話 私の工夫
プールにおける指導
―補助具を使用した評価例―
平垣 良志久
岡山県立早島養護学校教諭
・医療的ケアの最前線
医療的ケア研修の質の向上をめざして
―日本小児神経学会社会活動委員会の活動―
石井 光子
千葉県千葉リハビリテーションセンター小児科部長
・特別支援教育の動向
広島県の特別支援教育の展開と肢体不自由教育
平川 泰寛
広島県教育委員会事務局教育部 指導第二課 特別支援教室 指導主任
・キーワード
教育三法成立・公布


特別支援教育支援員
・読者の声
継続した取組を開始するために
永田  努
愛知県立岡崎養護学校教諭


 私はここ数年、低学年の子供たちと学習する機会をもっています。
就学と同時に、周辺環境として加わる「学校」は、子供たちや家庭に多大な影響を及ぼします。学校は、子供の実態を的確にとらえ、教育的ニーズを 集約していくことが、この時期には大切になります。
 低学年の子供たちへの支援で重要なのは、保護者とのコミュニケーションと、子供についての保護者との共 通理解だと感じています。その方策として、子供を取り巻く環境把握のために生活地図を作成し、ICFを利 用した関連図等を作ることを行っています。この作業により、具体的な子供の姿が浮かび上がり、保護者との 共通理解を図るツールとして有効な資料となっています。子供のより具体的な姿を目標にして実践に取り組む ことが、子供の見方を共通にしていく近道と感じています。
 「継続した支援」の大切さが話題になる中で、まだまだ教員間での考え方の差が、実践に大きな影響を与え ています。個人ではなく、チームや組織として子供を支援できる体制の構築が重要です。それでもチームを構 成するのは、個人です。外部機関と連携する上でも、個々人の考え方が実践に大きく影響します。
 今、教員として子供を多角的にとらえることができるのか、教員として何ができるのか、どのような方法を 組織としてとることができるのかなどについて、考え直していくことが更に求められているのだと感じていま す。


今一度「自立活動」について考える
浜松 真由美
富山県立高志養護学校教諭


 5年前から、「認定就学」、「個別の指導計画の作成」「個別の教育支援計画の策定」、「特別支援教育コ ーディネーターの指名」、「盲・聾・養護学校から特別支援学校」、「地域の特別支援教育のセンター的役割 の位置付け」など、本校では、新たな制度に対応した「言葉」が聞かれるようになっています。私自身何から どのように始めていけばいいのか日々迷い、自らの取組として、どれも不十分なままなのが現状です。
 先日、本校で行われた研究授業で、独歩で移動できる児童や側わんが強く全介助の児童などが対象の体育の 授業を参観しました。
 数年前から本校の児童生徒の障害が一段と重度・重複化し、指導の参考になればと思ったわけです。 授業終了後の研究協議において、障害の重い児童にとって、授業の指導目標・内容が「体育」なのか、「自立 活動」なのかを、私は明確にすることができませんでした。そのときに最も強く思ったのは、「個別の指導計 画に基づいた自立活動において、何をすべきなのかもう一度見直す必要がある」ということでした。
 現在、学校に求められている役割、果たすべき役割が多岐にわたってきています。どれも適切に対応しなけ ればいけないとは思いますが、すべてに対応するのは難しいとも考えています。むしろ、改めて児童生徒の指 導の充実を図るという学校の基本に立ち戻ることが大切なのではないか、と思っています。
 本校が特別支援学校としての役割を担うに当たり、今一度「自立活動のとらえ方」を共通理解するとともに 、本誌をはじめ各学校の先行研究に学びながら、指導の専門性を高めていかなければいけないと感じています 。
 
・トピックス
第24回障害児摂食指導講習会、第1回肢体不自由教育研究セミナー(第2次案内)
 
 
■次号予告
■編集後記