日本肢体不自由教育研究会
 

肢体不自由教育 No.185

領域・教科を合わせた指導

 ほとんどの特別支援学校(肢体不自由)で、「領域・教科を合わせた指導」による授業が実施されています。そのような中で、子供のどのような力を伸ばそうとしているのかが曖昧あいまいで、指導計画の立案や指導の展開で悩んでいる、などという声を耳にします。

 本号では、肢体不自由教育における「領域・教科を合わせた指導」について、どのようにとらえるべきなのか、これまでの歴史的な背景を踏まえつつ見直すことができればよいと考えました。

 そもそも、「領域・教科を合わせた指導」とはどのようなものなのか、そして指導を展開する上で肢体不自由教育であるからこそ押さえなければならないポイントはどこにあるのか、教育課程上の位置づけをどう押さえるべきなのか等、読者の皆様が日々の授業を振り返り、改めて考え直すきっかけとしていただければ幸いです。

 なお、本号より表紙や誌面のレイアウトの一部を変更しました。新しい『肢体不自由教育』を、今後ともよろしくお願いいたします。

(矢野 祐子)
 

・巻頭言
領域・教科を合わせた指導

山下 皓三
独立行政法人 国立特別支援教育総合研究所 名誉所員
・論説
領域・教科を合わせた指導の考え方とその課題
川間健之介
筑波大学大学院 人間総合科学研究科 准教授

領域・教科を合わせた指導と指導計画及びその評価
徳永  豊
福岡大学 人文学部 教授
・実践報告
小学部における領域・教科を合わせた指導
― 課題別グループ学習 ―
森島万希子
大阪府立 箕面支援学校 教諭

中学部における作業学習の取組
小野 裕樹
青森県立八戸第一養護学校 教諭

高等部における生活学習
― 学習発表会「どんだけぇ〜の泉」に向けた取組 ―
金井  拓
熊本市立必由館高等学校 教諭
(前熊本県立芦北養護学校 教諭)

特別支援学級における領域・教科を合わせた指導
小林 丈記
神奈川県海老名市立海老名小学校
特別支援学級 (肢体不自由) 教諭
・連載講座
重複障害児の指導に生かす教材・教具 (1)
「教材・教具」作りの基本
泉  慎一
東京都立あきる野学園 教諭
・講座Q&A
視覚障害のある子供の指導
・取組紹介
東京都で生まれたハンドサッカーの活動
新井  豊
東京都立八王子東特別支援学校 主幹
・作業療法の基礎知識
痙直型四肢まひ児の指導
関内 美奈子
東京都新宿区立新宿養護学校 非常勤講師・作業療法士
・ちょっといい話 私の工夫
給食を楽しく ―教育活動としての医療的ケア(経管栄養)―
古野 芳毅
新潟県長岡市立養護学校 教諭
・医療的ケアの最前線
生き生きとした地域生活のための活動展開
畠山 史郎
社会福祉法人すみれ福祉会 花の郷 施設長
・特別支援教育の動向
秋田県特別支援教育総合整備計画
塚本 宏明
秋田県教育庁特別支援教育課 副主幹
・図書紹介
『ICF及びICF―CYの活用 試みから実践へ ― 特別支援教育を中心に ―』
・読者の声
ICFの活用を目指して
中 美子
奈良県立奈良養護学校 教諭


 本校では、まだ学校への看護師派遣の公的予算が整備されていない平成10年度よりPTAの資金で学校に看護師を雇用し支援体制を整備するなど、教職員と保護者が一体となり教育を進めてきました。このような学校への看護師雇用を一例として、「子供たちの社会参加への願いをどのように実現していくのか」を大きな柱に、日々実践を行っています。
 19年度はこの点をさらに焦点化し、ICFの考え方を取り入れた校内研修を進めました。本校では三年前からICFに注目してきましたが、さらに深く学ぶために、19年度から校内研修に位置づけて取り組んでいます。
 これまでに講演会を2回開催しました。内、1回はICF―CYジャパンネットワークから講師を招き、県内の特別支援学校(肢体不自由)三校の合同研修会において、実践例やワークショップを交えた研修を行いました。
 また、各地で開催されたICFに関する研修会の概要や、様々な雑誌に掲載された内容などをまとめ、情報提供も行っています。
 本誌のICFに関する記事にも注目していますが、とりわけ第183号の「肢体不自由教育におけるICFの活用(1)」は、ICFの概要がわかりやすく記載されており、教職員に紹介しました。
 19年度は、ICFの「理解」に力を入れた一年となりましたが、20年度はその「活用」へと発展させていきたいと考えています。


寄宿舎の役割を考える
岡村 浩臣
山口県立防府総合支援 学校寄宿舎指導員


 当初、寄宿舎は、通学の保障のために設置されましたが、時代の流れと共に、集団生活で育つ力だけでなく、舎生一人一人の社会自立に向けてのより細やかな支援が求められるようになってきました。
 本校寄宿舎では、多様な障害の舎生への支援にあたるために、平成17年度から「個別の実態把握」、「個別の指導計画」を作成し、寄宿舎指導員間の連携、さらに教員との連携に活用し、保護者との共通理解を進めているところです。
 「個別の指導計画」に基づいた指導、一人一人の生活技術の向上、集団生活の中での当番活動や行事などへの参加やコミュニケーション能力の向上などの指導を行っています。
 また、自閉症の舎生も多く、生活の見通しが視覚から分かるように工夫しています。具体的には、寄宿舎指導員が、生徒の実態に応じた文字、写真などを使って生活スケジュール表を作成し、活用しています。肢体不自由の生徒にも効果があり、自らスケジュール表を作り、それを意識しながら、いつリラクセーションするのかを自分で考え、自分の責任でスケジュール管理を行っています。
 本誌第176号掲載の森下先生の「読者の声」を読み、寄宿舎の役割を再認識しました。今後、肢体不自由の生徒だけではなく、多様な障害の生徒が入舎してくることが予想されます。舎生一人一人の社会自立に向けての支援にあたって、さらなる専門性が求められています。
 私も新たな気持で、本誌を活用しながら支援していきたいと思います。
・トピックス
学習指導要領の改訂に関する動向他
■次号予告
■編集後記