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肢体不自由教育 No.186
授業改善と指導案
今回は「授業改善と指導案」をテーマに、授業を評価、改善するためポイントや、指導案作成の仕方など実践指導力の向上を目指した特集を組みました。
授業は子供が学ぶ場であり、「何を、どう学ぶのか」がその中核です。また、教師が「教えたい」ことを、子供が「できた、わかった、学びたい」に転化することが、授業づくりの本質だと思います。
孔子の「論語」に、「これを知る者はこれを好む者に如かず。これを好む者はこれを楽しむ者に如かず」という句があります。この句は、物事を理解しているよりも、物事を学ぶことが好きな方がよい。学ぶことが好きであっても、学ぶことを楽しむ人にはかなわない、と解釈されます。これは、授業づくりにおいて大事なことを示唆していると思います。
よりよい授業実践のためには、「授業を振り返り、授業を改善する」という、日々の地道な積み重ねが必要です。本特集の巻頭言、論説、実践報告を味読し、そのことを改めて認識しました。本特集が会員の方々の実践力向上につながることを願っています。
(古山 勝)
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- ・写真
- がっこう たのしいよ!!
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- ・巻頭言
- 授業改善と授業案―具体的に追究する―
- 太田 正己
皇學館大学 社会福祉学部 教授
- ・論説
- 肢体不自由のある子供の教育活動における授業改善と評価
- 渡邉 章
植草学園大学 発達教育学部 教授
- 授業改善のための指導案作成による取組
- 神山 寛
東京都立光明特別支援学校長
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- ・実践報告
- 授業改善の工夫―朝の会の取組を通して―
- 藤原美枝子
石川県立総合養護学校教諭
生徒の自己学習力を高めるための授業改善の取組
―総合的な学習の時間の実践を通して―
- 垣添 忠厚
岐阜県立関特別支援学校教諭
評価シートを活用した授業改善の取組
- 佐藤 篤
秋田県立能代養護学校教諭
(前秋田県立秋田養護学校教諭)
- 生徒に分かりやすい授業づくりへの試み
―ビデオ記録の分析を活用した授業改善―
- 松本 晃治
東京都立大泉特別支援学校教諭
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- ・連載講座
- 重複障害児の指導に生かす教材・教具 (2)
「教材・教具」の活用
- 泉 慎一
東京都立あきる野学園 教諭
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- ・講座Q&A
- 「ものづくり」の授業
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- ・施設紹介
- 京都府立こども発達支援センター(すてっぷセンター)
―地域、関係機関との連携の中で―
- 長谷川 福美
すてっぷセンター コーディネーター
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- ・作業療法の基礎知識2
- 痙直型四肢まひ児の指導(2)
- 関内 美奈子
東京都新宿区立新宿養護学校 非常勤講師・作業療法士
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- ・ちょっといい話 私の工夫
- 「ピンポン・ブー」で演技に参加
- 小野寺 淳子
宮城県立光明養護学校教諭
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- ・医療的ケアの最前線
- 協働を考える―看護師と養護教諭―
- 中野 愛子
静岡県立袋井養護学校養護教諭
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- ・特別支援教育の動向
- 岩手県における高等学校での特別支援教育
- 佐藤 淳
岩手県教育委員会 学校教育室 特別支援教育担当 指導主事
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- ・読者の声
- 自然体験で育つ生徒たち
- 山田 達也
山梨県立甲府支援学校教諭
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中学部所属2年目。12名の生徒たちに自然体験を目標にした授業(「総合的な学習の時間」の位置づけ)を組んだり、行事を実施したりしています。学部だよりのバックナンバーを引用しながら、自然体験の様子の一部を紹介します。
春。校内ビオトープにて、春の花々や草を虫めがねでのぞいたり、聴診器で樹木の「生命音」を聴いたり、池の水を手や足で触ったり、など五感をフルに活用しながら、校内での自然体験を満喫しました。
夏。甲府市郊外にある「武田の杜」へ出かけました。夏の名残の日差しをいっぱい浴びながら、芝生広場で活動しました。芝すべりを通して大地の感触を確かめているような表情、木を抱いたり木に登ったりしたときの神妙な表情などが印象に残りました。
秋。季節の違いを実感することをねらい、再び「武田の杜」へ出かけました。ひんやりとした空気、控えめに色づき始めた木の葉に包まれ、落ち葉のプール、ツリーボード、ツリークライムなどを楽しみました。人は自然の中に、杜の中に身を置いたり身を任せたりすると、心も身体も表情もゆるんでくることを実感しました。
杜は、実に多くの生徒たちの笑顔、生き生きとした表情、自ら体を起こしてくる動き、積極的な手や足の動き、挑戦してみようとする意欲、対面する人の受け入れなどを引き出し、生徒にとって学びの多い「宝庫」だと思います。
また、新しい春が巡ってきました。
きずな
- 平松 裕史
岡山県立早島養護学校教諭
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11月下旬、六年生のA君が転校することになった。「少しでも、自分の足で……」という思いから、大阪での手術と入院を、自分の意志で決めた。遠く離れた大阪での生活に、保護者も随分悩まれたようだった。担任の私は、A君の卒業を控えて寂しかったが、気持を切り替え、転校する前に学級で「A君を励ます会」を行った。
会が始まった。いつも「がんばる」が口癖のA君も、やや緊張の面持ちで表情が堅い。友達や先生からのメッセージ、歌、応援の垂れ幕とプログラムが続き、その顔から、涙がこぼれ始めるのに、時間はかからなかった。子供たちも教師も、学級全体が涙に濡れていった。A君の口からは、涙声ももれてきた。私も、ただただ涙をぬぐうばかりとなった。
そんな時、突然B君が電動車いすを操作してA君に車いすを近づけ、何度も手を伸ばしてから、ぎゅっとA君の手を握った。静かな時間が流れた。後で近くにいた先生に聞くと、何度も「A君の涙をふいてあげて」と言っていたそうだ。心と心がつながり通い合った、そんな光景だった。また、C君は、何度もメッセージの練習をしていたにもかかわらず、原稿にはなかった「A君、さみしいよぉ。大阪でもがんばってね」と自分の言葉で語り始めた。予定にない行動だったが、真心の表れだった。
40歳を過ぎ、初めて肢体不自由教育に携わった。やれるのか、できるのかという不安ばかりの日々だった。でも、A君やB君、C君を始めとする早島養護学校の子供たちとの生活を通して、はっきり「やっていきたい」「やるぞ」という気持で二年目を終えようとしている。
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- ・図書紹介
- 『ナイチンゲールに学ぶ家族ケアのこころえ』
『肢体不自由のある子どもの教科指導Q&A』
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