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肢体不自由教育 No.193
キャリア教育の展開
新しい学習指導要領が告示され、自立と社会参加をより促進するために、学校として児童生徒の人生を見通した長期的な視点がますます必要となっています。本号ではそのことを踏まえ「キャリア教育」について特集しました。
今回、特集を企画・編集していく過程で、肢体不自由教育における「キャリア教育」が手探り状態にある現実に直面しました。そのような中で、巻頭言や論説において、企業等の視点から就職するために必要な力など、充実した人生を歩むための「生活の質」の向上を目指すキャリア教育について示唆いただきました。また、実践報告では、企業等の学校外資源の活用や教育課程編成の工夫、自己理解を促す授業づくりなど、斬新な実践を紹介していただきました。
これらのことは、これまで実施されてきた進路指導や職業教育から視点を変えることの重要性を示唆しています。障害の状態にかかわらず、小学部から高等部まで社会人としての役割を果たすことや働くことなど、よりよく生きることを育むキャリア教育の推進です。本特集号がその一助となれば幸いです。
キャリア教育には、教員一人一人が児童生徒の人生に携わっているという意識が重要であり、教育活動全体を通した授業の積重ねの大切さを改めて感じています。
(古山 勝) |
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- ・写真
- でかけよう! やってみよう!
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- ・巻頭言
- 職場がおうちへやってきた
- 木村 良二
株式会社 沖ワークウェル 取締役社長
- ・論説
- 就職するために必要な力を育てる
- 市川 浩樹
障害者職業総合センター職業リハビリテーション部
研修課長補佐
- 自立と社会参加を目指したキャリア教育のあり方
- 松為 信雄
神奈川県立保健福祉大学教授
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- ・実践報告
- キャリア教育推進室と企業等学校外資源を活用したキャリア教育
- 江見 大輔
東京都立城南特別支援学校教諭
- 移行支援教育におけるコース制と授業の工夫
- 飯窪 美紀子
神奈川県立麻生養護学校教諭
- 卒業後の生活をみすえた授業づくり
―くらす、はたらく、たのしむ観点から―
- 田村 清人
京都市立呉竹総合支援学校副教頭
- 重複障害がある青年前期の生徒に対するキャリア教育
―自己理解を深める指導のあり方―
- 倉科 辰男
北海道平取養護学校教頭
- ・キーワード
- 視能訓練士
- ・連載講座
- 訪問教育(1)
訪問教育の歩みと現状
- 長沼 俊夫
独立行政法人国立特別支援教育総合研究所
総括研究員
- ・講座Q&A
- 理科における実験の指導
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- ・活動紹介
- 住みやすい社会を創る
-当事者が主体となる社会づくり-
- 古庄 和秀
福岡県大牟田市議会議員
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- ・医療の基礎知識4
- 重度肢体不自由児の急変時の対応
- 石井 光子
千葉県千葉リハビリテーションセンター 第一小児科部長
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- ・ちょっといい話 私の工夫
- 自分用の転がし台で楽しいボウリングゴルフ
- 小橋 勝政
岡山県立岡山西養護学校教頭
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- ・学校保健と医療的ケアの今
- ふらっとスペース しゃべり場
―PTA活動を通しての医療的ケア―
- 髙橋 和恵
元大阪府立藤井寺支援学校PTA会長
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- ・特別支援教育の動向
- 青森県における特別支援教育の推進と肢体不自由教育
- 湯田 秀樹
青森県教育庁学校教育課 特別支援教育推進室
指導主事
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- ・読者の声
- 職員同士のコミュニケーションの大切さ
- 廣澤 俊房
大分県立別府養護学校教諭
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特別支援学校は、チームティーチングでの指導や会議の機会が多いことから、職員同士のコミュニケーションが大切な職場だと思います。互いに無関心であったり、非難し合ったりするような状況では、よい指導ができません。
私は国立特別支援教育総合研究所で約2か月間の研修に参加し、2つのことを得ました。1つは、特別支援教育について、質が高い情報をたくさん学んだことです。
2つ目は、学校を離れることで本校のことをじっくり振り返ることができ、本校の職員同士のコミュニケーションのよさを再認識したことです。日常的なコミュニケーション状態のよさが、職員の一体感を生んでいると感じます。
職員同士が馴れ合いの関係にならず、指導に関して多様な議論をするためには新しい考え方や方法の導入が必要だと思います。仲間意識が壊れるのを恐れて、それまでとは異なった考え方や方法を提案するのは難しいかもしれません。しかし、日々の指導を進展させるためには、新しい考え方や方法を導入しながら自由な議論を職場の中で展開することは、とても大切だと思います。また、このような議論は、職員のコミュニケーションを円滑にし、学校としての発展にもつながると思います。
本誌は、これまで新しい視点からの情報を提供してきました。今後も、私の考え方の枠組を超えた、質の高い情報を発信する機関誌であってほしいと願っています。同時に私自身もその情報を受け取れる感性を磨いていきたいと思っています。
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- 社会人講師との双方向の連携を目指す
- 小谷 慎一
徳島県立板野養護学校教諭
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肢体不自由・病弱・知的障害の複数の障害種別に対応した教育課程を設置している本校では、平成17年度から医療現場で活躍しているリハビリテーション関係者を特別非常勤講師(社会人講師)として、月1回招聘しています。最初は、摂食・嚥下指導を主な目的として言語聴覚士を招聘することから始まりました。19年度より身体運動や筋・骨格系等の専門家として理学療法士を、さらに21年度より応用的動作の専門家として作業療法士を招聘しています。
原則として月1回3時間ずつの社会人講師の来校日には、本校の自立活動課の教員が調整・案内役を務めます。講師が授業に参加し実践的な指導助言を行ったことが、児童生徒への日々の指導に生かせるように、@電子メール等を用いた事前の打ち合わせと当日の時間調整、A指導助言の記録及び画像撮影、B記録の整理・保存及び校内回覧の実施等に取り組んでいます。
社会人講師より指導助言を受けた教員が、それらの内容を思い出し児童生徒への指導が改善するように、また指導助言の記録を校内回覧で目にした教員が参考にできるように、A4判の記録用紙1枚に情報を集約し、核となる画像も挿入しています。21年度の記録用紙には、指導助言を受けた担当者が感想を記入する部分を追加しました。
多忙な中、離れた職場より本校まで指導助言に来ていただいている社会人講師の方々へ、指導助言の成果を少しでも還元できればと考えています。社会人講師の方々が専門分野の異なる教育現場での指導にやりがいを感じていただき、リハビリの現場や本校以外の教員へ指導助言する際に役立つことを願っています。
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- ・図書紹介
- 『専門性向上につなげる授業の評価・改善』
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- ・トピックス
- ねむの木賞・高木賞決定、研究紹介、第34回日本肢体不自由教育研究大会案内
■次号予告
■編集後記
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