日本肢体不自由教育研究会
 

肢体不自由教育 No.205

キャリア教育の視点を生かした授業づくり

 本研究会では、第35回研究大会から「小学部からの一貫したキャリア教育」というセミナーを設定しました。予想以上に多くの参加者が集まり、「キャリア教育」に対する注目度や期待の高さを実感しました。

 本誌では、比較的障害が重い子供に焦点を当てた実践報告が多い中、今号では、比較的障害が軽度の児童生徒を対象にした事例を多く集めました。その一方で、植木博美先生の報告に紹介されている重複障害の生徒の校内実習や、赤嶺信吾先生の報告に紹介されている進行性の病気がある生徒に対するテレワークの可能性等、各校で全ての児童生徒を対象にキャリア教育を丁寧に検討し、指導している様子が伺えました。

 菊地一文先生の論説には、「表出言語の有無や障害の状態にかかわらず、全ての児童生徒には『願い』がある」というマズローの言葉が引用されています。本号が、その「願い」を育み、実現する手がかりとして活用されることを期待します。

(保坂 美智子)

 

・巻頭言
キャリア教育の充実に向けた指導の創意工夫
川間健之介
筑波大学大学院教授・同附属桐が丘特別支援学校長

・論説
キャリア教育の意義と授業づくり
菊地 一文
国立特別支援教育総合研究所主任研究員

肢体不自由教育におけるキャリア教育の展開
新井 雅明
神奈川県立武山養護学校長

・実践報告
自立と社会参加を目指したキャリア教育の実践
植木 博美
栃木県立のざわ特別支援学校教諭

ライフプランを活用した豊かな生活づくり
─今日よりイケてる明日の自分を目指して─
藤田  明
香川県教育委員会事務局 特別支援教育課主任指導主事
(前香川県立高松養護学校教諭)

身辺介助が必要な生徒の就労支援
―自立活動と各教科との連携―
赤嶺 信吾
沖縄県立鏡が丘特別支援学校教諭

児童生徒の夢を実現できる学校を目指して
―情報キャリアハイウェイ構想―
永井 立雄
茨城県立水戸特別支援学校教頭

・キーワード
見る力
大塚  恵
筑波大学附属桐が丘特別支援学校教諭
・連載講座
動作法の理論と実際(1)
自立活動と動作法の理論
宮普@ 昭
山形大学地域教育文化学部教授

・講座Q&A
助詞の指導について


・取組紹介
私にもできるレクリエーションスポーツ
古賀 稔啓
千葉県立桜が丘特別支援学校教諭
・キャリア教育の基礎知識1
キャリア教育が求められる背景
─就労支援の立場から─
朝日 雅也
埼玉県立大学教授
・ちょっといい話 私の工夫
エコ封筒作り
―生徒が一人でできる補助具―
島谷 幸子
青森県立青森第一高等養護学校実習教諭
・学校保健と医療的ケアの今
医療的ケアに関する新しい制度の概要と文部科学省の対応
下山 直人
文部科学省初等中等教育局 特別支援教育課特別支援教育調査官
・特別支援教育の動向
岡山県における特別支援教育の充実
金島久美子
岡山県教育庁特別支援教育課 指導主事(主幹)
・読者の声
 
教育課程の見直しを通して
森合さおり
島根県立益田養護学校教諭

 本校は知的障がいのある児童生徒を対象とした養護学校(当時)として、平成12年に開校しました。私は現在、知的障がいと肢体不自由を併せ有する重複障がい学級を担任しています。平成24年度の肢体不自由教育部門開設に当たり、教育課程の見直し・検討をする中で、自立活動を主とする教育課程において、教科の目標・内容を取り入れることや、各教科等を合わせた指導の形態に含める教科や領域についての整理を行いました。

 これまで教育課程の編成に携わる機会がなかった私ですが、平成23年度の国立特別支援教育総合研究所の専門研修で学んだことや、私にとって肢体不自由教育の情報源となっている本誌の論説や実践報告等を参考にさせていただきながら、肢体不自由教育における教育課程の基本的な考え方を学ぶことができました。また、校内で話合いを進める中で、さらにその考え方を深めることができたと感じています。

 教育課程の見直しの取組を通して、重度・重複障がいのある児童生徒の指導は自立活動の指導が全てであり、教科の指導は難しいという私の固定化された考え方に新しい風が吹き込まれました。学校での学びとは何か、という原点に立ち返ることができたように思います。

 また、これまで発達年齢と生活年齢の差が開く高等部の生徒への指導内容について迷うところがありましたが、「一人の高校生」として学ばせること、接することも改めて大切にしていきたいと思う今日このごろです。



「達成感」を味わう授業
後松慎太郎
秋田県立横手養護学校教諭

 生徒が主体的に学習に向かうときの要素の一つに、「達成感」があると思います。生徒と一緒に学習する中で、生徒が「達成感」を大いに感じた学習に出会いました。

 私が所属する学年では、県内の特別支援学校の文化祭において、春からの学習の成果をステージで披露することになりました。それに向け、一学期に自分たちの住む地元の良さについて調べ、その内容を基に、二学期はステージ発表の内容を考え練習しました。練習では、まだ体験したことのない大勢の観客の前で行う発表に生徒は不安を感じながらも、「友達と一緒に」「目標に向かって」等の前向きな発言が多く聞かれました。徐々に「みんなで成し遂げる」という一体感も見られるようになってきました。当日の発表の出来映えは、発表を終えた生徒のキラキラと輝く表情から見て取れました。また、発表を終えると様々な方々から称賛の声を掛けられ笑顔に包まれたり、友達同士で声を掛け合ったりする姿が見られました。

 目標の達成が少し困難であっても、自ら意欲的に取り組み、やり遂げることで「達成感」は得られると思いました。また、自分だけではなく、他者からも結果を評価されることで、より強い「達成感」に結びつくと思いました。この「達成感」が、次の学習や日々の生活での「挑戦していこう」という意欲につながればと思います。そのような積み重ねが、将来の生活につながると信じています。

 最後に、彼らがやり遂げることができた要因の一つに「仲間」が挙げられます。その仲間と共に学び合えるこの学校生活を大切にしたいと思います。

 これからも、本誌に載っている実践報告等を参考にし、一人一人に応じた「達成感」が味わえる学習を展開していければと思います。

・図書紹介
MOSESワークブック てんかん学習プログラム
視覚シンボルでコミュニケーション
特別支援教育におけるATを活用したコミュニケーション支援
脳性麻痺の運動障害と支援―変形の理解とからだの安定のための指導―
 
・トピックス
平成24年度文部科学省特別支援教育関係予算の主要事項の概要
平成24年度特別支援教育関係研究会の予定
 
■次号予告
■編集後記