本校は、特別支援学校(肢体不自由)で、教育課程の異なる三つの学習グループがあります。私が担当していた小学校の各教科を中心とした教育課程の学習グループの体育の授業では、子供たちが、自分の目標に向かって、楽しみながら体を動かす様子がたくさん見られました。
例えば、野球の授業で、Aさんは不随意運動があるため、思うように体の動きをコントロールすることができませんでした。しかし、私は、Aさんにも「ピッチャーが投げたボールを打ち返す」ことを味わってほしいと思いました。そこで、Aさんが両手を離すと大きなラケットがバネの力で跳ね返り、ボールを打ち返せるという補助具を用意しました。最初は、なかなかタイミングが合いませんでしたが、友達に励まされたり、「1、2、3」の合図に合わせたりすることで、次第にピッチャーが投げるボールにタイミングを合わせて両手を離せるようになってきました。
いざ試合になると、Aさんのピッチャーに向ける眼差しは真剣そのもので、「絶対に打ち返すぞ。」という闘志にみなぎっていました。そして、見事にボールを打ち返すと、友達から大きな歓声が沸き上がりました。あの瞬間のAさんの笑顔が忘れられません。翌年度、再びこの補助具を抱えて体育館に向かうAさんの姿は、自信とやる気に満ち溢れていました。
これからも、子供自身が頑張れる目標を設定すること、どんな子供でも参加できる状況づくりを大切にした授業を目指していきたいです。
私は5年前に高等学校から本校に赴任し、現在、中学部重複学級の担任をしています。
本校に赴任して最も印象的だったことは、生徒たちの感性の豊かさでした。初めて授業で音楽鑑賞をした時、曲調が穏やかになると耳を澄ますような表情をして体の動きがゆったりし、そのうち曲がリズミカルになると、体に力がみなぎるように両手を大きく伸ばし、大きな口を開けて笑顔になる、そんな生徒たちの様子を初めて目にし、驚いたことを覚えています。
また、毎日関わる中で、一人一人のキャラクターがはっきりと伝わってくることも、とても興味深く感じました。
この子供は恥ずかしがり屋だなとか、この子供は明るくひょうきんな性格だなとか、思いやりのある優しい子供だな、などということが、言葉を話したり大きなジェスチャーをしたりするわけでもないのに伝わってくるのです。
動きは小さくても伝えたいことをたくさんもっていて、一生懸命それを表現しようとしている生徒たちの強いエネルギーを感じ、とても魅力的に思ったものです。
私は普段、生徒と関わる中で、その目やしぐさ、表情などをよく見て、伝えたいことを読み取るようにしています。また、私からも、できるだけ生徒に分かりやすい方法で伝えるように、心がけています。
他の学習活動はもちろんですが、私の専門領域である音楽を通じて、生徒たちの感性に働きかけていきたいと思います。
そして生徒が、自己表現する喜びを経験し、表現の手段を身に付け、毎日を生き生きと楽しく過ごしてくれることが私の願いです。