日本肢体不自由教育研究会
 

肢体不自由教育 No.212

豊かな人間関係をきずく指導

 
 平成21年の学習指導要領改訂から、自立活動の内容に「人間関係の形成」が新たに加えられことを踏まえ、肢体不自由教育における豊かな人間関係をきずくための取組について考えるため、本特集を組みました。
  巻頭言では、自立活動だけでなく、幅広い視点から豊かな人間関係の形成のあり方について、黒須文夫先生に述べていただきました。論説では、徳永豊先生に、コミュニケーション発達の視点からの豊かな人間関係の構築と指導について、鶴宣彦先生に、自立活動の人間関係の形成を中心にした指導について、それぞれ述べていただきました。
  実践報告では、植竹安彦先生に多面的な視点で人間関係の形成をとらえた指導について、杉本雅昭先生に交流及び共同学習を通した指導について、種田昌彦先生にグループ・エンカウンターを活用した指導について、それぞれご報告いただきました。
  今回の特集が、子供たちの豊かな人間関係の広がりにつながっていくことを心から願っています。

(徳永亜希雄)

 

・巻頭言
豊かな人間関係の形成を目指して
黒須 文夫
埼玉県立熊谷特別支援学校長

・論説
他者との出会いにより促される人間関係の構築
―対人行動の発達の視点から―
徳永  豊
福岡大学人文学部教授

重度・重複障害のある肢体不自由児の自立活動における
「人間関係の形成」を中心とした指導
鶴  宣彦
長崎県教育庁特別支援教育室指導主事


・実践報告
発達臨床的視点から人間関係を育てる指導
―感覚統合不全がもたらす生きづらさと、その改善から見えてきたもの―
植竹 安彦
東京都立城北特別支援学校教諭

交流及び共同学習を通した人間関係の形成
―中学校での授業交流を通して―
杉本 雅昭
福島県立郡山養護学校教諭

より良い人間関係をきずくことを大切にした指導
―構成的グループ・エンカウンターを活用した指導―
種田 昌彦
千葉県立袖ケ浦特別支援学校教諭
(前千葉県立銚子特別支援学校教諭)

・研究大会報告
第37回大会を終えて
杉野  学
大会会長
(東京都立多摩桜の丘学園校長)
研究大会概要

・連載講座
見ることへの配慮が必要な子供の指導(3)
 見えにくさをもった障害の重い
 子供の視機能の特性と実態把握
齊藤由美子
国立特別支援教育総合研究所主任研究員
・講座Q&A
装具の製作と配慮事項

・活動紹介
身体の不自由な方々の豊かな生活を目指して
村上  潤
NPO法人ポップンクラブ代表理事
・スヌーズレンの基礎知識 3
スヌーズレン教育の位置付けとその意義
姉崎  弘
三重大学教育学部教授
・ちょっといい話 私の工夫
新潟市障がい者ITサポートセンターの活動
山口 俊光
新潟大学大学院自然科学研究科・ 新潟市障がい者ITサポートセンター特任助手
・学校保健と医療的ケアの今
抗体検査とは
野村 芳子
島田療育センターはちおうじ 医師
・特別支援教育の動向
大阪府における支援教育の充実
塩山 清隆
大阪府教育委員会事務局
教育振興室支援教育課支援学校グループ
 
・読者の声
 
その子らしい豊かな生活のために
下山 永子
青森県立弘前第二養護学校教諭

 肢体不自由特別支援学校である本校において、6年間高等部で進路を担当した経験は、近い将来、地域の中でその子らしい豊かな生活をしていくために「今」何が必要かを深く考える機会となりました。
  言葉で表現することが難しい生徒の気持や願いに寄り添った指導や授業づくり、他機関、他職種との連携の在り方など、チームとして組織として取り組んでいくことの必要性を強く感じました。
  本校では昨年度から、ICF関連図を活用してのケース会議や授業改善に取り組んでいます。子供を多面的・総合的に理解することや、関係者による「課題の焦点化」や「役割分担」は、個別の教育支援計画の活用及び個別の指導計画や授業づくりなど、個のニーズに応じた指導や支援を目指しています。
  障害の重度・重複化が進む中、「参加・活動」の視点から複数の目による話し合いの充実は、ぶれのない一貫した指導・支援につながります。
  本誌の論説や実践報告等は、自分の実践してきたことの意味や価値を深め、重度の子供たちを見る上で大切な視点を教えてもらうなど、新たな気づきや発見がたくさんあります。繰り返し読めるように付箋に見出しを付けて、いつでも取り出せるようにしています。
  今年度は久しぶりの小学部所属ですが、高等部での経験を生かし、また本誌での情報を参考にしながら、子供の願いに寄り添い、将来の生活につながる「今」を大切にしたチームでの指導の充実に努めたいと思います。


百花繚乱

二階堂 悟
秋田県立秋田きらり支援学校教諭

 昨年度、私は生徒との日常を学級通信に綴りました。私の勤務する学校は、肢体不自由者及び病弱者である児童生徒に対する教育を主として行う特別支援学校です。
  隣接する医療療育センターには、手術、治療のために、年間10数名の児童生徒が入退院してきます。昨年度は在籍者1名のクラスに、新しく3名の転入生を迎えたので、日々の出来事を紹介する「百花繚乱」を発行しました。4人の生活に目を向けると、実に様々な人と関わり、その時々でたくさんの役割を担い、生活をしていることがわかりました。
  いつ、どこで、誰と、この3つの言葉に共通するもの、それは「間」という文字です。時間、空間、そして人間(じんかん)。人は一日という時(生活)の流れの中で、空間を行き来し、人と出会い、様々な学びを得ます。
  縁があって国立特別支援教育総合研究所の研究に加わり、ICFについて学びました。人の全体像を社会との関係の中で捉えると、いつ、どこで、誰と、どのように過ごしているのかがとても大切になります。
  今、「学びをつなぐ授業づくり」に取り組んでいます。「学習内容」、「個の学び」、そして、「一人一人をしっかりとつなぐ授業」、これこそが、3つの「間」を捉える授業と言えるのではないでしょうか。
  20数年前、一人の生徒と出会いました。その年、この生徒と夏の療育キャンプに参加し、学校を離れた場所で、1週間、共に過ごしました。この時の「学び」は、私の礎となりました。時の流れの中で、同じ場所に立ち、人と人とが向き合うことで生まれる「学び」。全ての児童生徒が「百花繚乱」となるよう願っています。

 
・トピックス
第30回障害児摂食指導講習会
 
■次号予告
■編集後記