日本肢体不自由教育研究会
 

肢体不自由教育 No.214

校内研修を生かす

 
 自分にとって「よかった研修」とはどんな研修でしたか?それはきっと「受けてよかった」ではなく「やってよかった」と思えた研修だったのではないでしょうか。
 この受け止め方の違いは、研修に対する意識の違いの現れでしょう。教師が主体的に研修へ参加することが積み重なっている学校は、単に教師の資質能力が向上していくだけでなく、学校全体の教育力が向上していくことにつながると考えます。
 本号は、学校内で行われる「校内研修」を「組織的に」かつ「各教師の課題の解決につながるように」行っていくためには、どうすればよいのか、考える機会となる特集としました。より主体的に参加できるような工夫、より組織的な研修企画の工夫など、校内における研修がその後の教育活動に結びつくような実践を取り上げました。
 教職員が互いに学び、高め合える校内研修となるための一助となればと思います。

(尾﨑美惠子)

 

・巻頭言
学校が元気になる校内研修
―OJT等を通した授業改善―
杉野  学
東京都立多摩桜の丘学園校長

・論説
校内研修の現状と課題
阿部美穂子
富山大学人間発達科学部准教授

校内研修の充実に向けて
―学校経営の視点から―
上林 宏文
北海道七飯養護学校長


・実践報告
授業研究会を核とした校内研修
―クラス、校内教育相談を活用したチームアプローチ―
燒リ 裕美
兵庫県川西市立川西養護学校教諭


授業力向上に向けた組織的な取組
―指導教諭を活用した授業力・授業支援力の育成―
市宮 環美
東京都立八王子東特別支援学校指導教諭


学校の実態や必要性に応じた校内研修の実際
西村 健一
香川県立高松養護学校小豆分室教諭


校内研修を生かすさいたま市の特別支援教育システムの中での小・中学校への研修協力
―特別支援教育コーディネーターと特別支援教育相談センターとの連携を中心に―
渡辺 政治
米沢谷 将
さいたま市立さくら草特別支援学校教諭



・図書紹介

・連載講座
訪問教育の今(二)
 訪問教育の指導の実際
大崎 博史
国立特別支援教育総合研究所主任研究員
・講座Q&A
読みの指導について

・活動紹介
全国KOSEN福祉情報教育ネットワーク
―こんなものがあったらいいなあ、を現実に―
大杉 成喜
熊本大学教育学部講師
・スヌーズレンの基礎知識 5
スヌーズレン教育の授業実践例
姉崎 弘
三重大学教育学部教授
・ちょっといい話 私の工夫
課題学習やかず(算数)の学習における教材・教具の工夫
―操作のしやすさに焦点をあてて―
林  厚子
千葉県立袖ケ浦特別支援学校教諭
・学校保健と医療的ケアの今
大規模な特別支援学校(肢体不自由)におけるアレルギー対策
―平成25年度の取組―
松崎 理恵
東京都立北特別支援学校養護教諭
・特別支援教育の動向
「第59回全国肢体不自由教育研究協議会(秋田大会)」を終えて
大日向邦彦
第59回全国肢体不自由教育研究協議会秋田大会 実行委員長
秋田県立秋田きらり支援学校長
 
・読者の声
 
共に
赤尾 輝子
大分県立中津支援学校教諭

 平成25年度、訪問教育を担当することになりました。訪問教育の中で感じたことについてお便りします。
 一つは保護者との信頼関係を築くことです。教育の現場、ましてや訪問教育においては大事なことです。まず授業の始めと終わりに検温をし、健康状態を確認します。授業の流れは大きく変えず、指導項目を毎回保護者に提示して知らせるようにしました。新しい項目は保護者に説明してから行うように心がけています。
 二つ目は学校と児童をつなぐことです。iPadを使用し、学校の様子を知らせるようにしました。スクーリングができにくい児童にとって、学校とつながることは特に大切なことではないかと感じています。
 はじまりの会では、1年生から6年生の各クラスで本児の名前を呼んでもらった様子を撮影したビデオを用いて、返事をする学習をしました。また、学級担任や友だちに毎日名前を呼んでもらい、学校でも本児が同じ学年の児童であることを意識づけてくれています。学校の友だちともビデオレターでやりとりをすることもできました。学校での音楽の授業をビデオで撮り、訪問教育の中で友だちの歌や合奏にあわせて、保護者と一緒に楽器を鳴らしたり、身体表現をしたりしています。
 本児から癒しと活力をもらい学校へ戻る車中は心がほんわり温かく感じます。これからも児童・保護者と共に、学校の友だちや職員とつながっていきたいと思います。


専門性の向上を目指して

潮田 真一
京都市立呉竹総合支援学校指導教諭

 「子供の声が校舎内に響き合う学校になりましたね。」そんなことを学校に来られた参観者に言われたことがあります。丁度、京都市で地域制・総合制へと養護学校が再編されてから3年が経過した頃だったと思います。
 当時、私は授業企画や研究主任の業務にあたっていました。校内を巡回する中で脳性まひの肢体不自由の児童と自閉症の児童が教室で、声をあげて鬼ごっこをしている姿を見て、肢体不自由養護学校の時代とは随分違ってきたな、と実感したことを覚えています。ただし、動きの早い児童生徒のペースに、指導者の目が向きがちになっていたことも事実でした。 
 総合制としての方向性を模索しながら、これまで培ってきた肢体不自由のある児童生徒に対する指導力の向上に努めていた頃、職員室の図書コーナーで本誌を手にしました。それ以来、研究への道標、教員の意識調査、研修企画はもとより日々の実践の指針を示してもらったのは、本誌での情報でした。
 現在、指導教諭という立場で、学校運営や児童生徒の指導と共に次代を担う教員の育成にも力を注いでいます。また、総合支援学校教育研究会活動の一環として、自立活動の手引きの作成に向けての編集作業にも取り組んでいます。
 そんな中から今後の自分自身のテーマを再認識しています。それは「肢体不自由教育の文化の継承」です。先人が築き上げてきた歴史の大切さを学び、実践力を磨いて、総合制の中での肢体不自由教育の未来を語れる、そんな現場作りの一翼を担えればと思っています。

 
・トピックス
 
■次号予告
■編集後記