日本肢体不自由教育研究会
 

肢体不自由教育 No.217

小・中学校における肢体不自由教育

 
 本号では、小・中学校における肢体不自由教育の特集として、小・中学校在籍児童生徒への指導実践とともに、特別支援学校による小・中学校への支援、並びに特別支援学校在籍児の小学校での交流及び共同学習の実践について、それぞれ報告いただきました。
 また、これらの実践の背景となる考え方やこれまでの経過、制度、今後の方向性等について、巻頭言及び論説において、それぞれ述べていただきました。
 インクルーシブ教育システム構築に向けた動きが進む中、小・中学校における肢体不自由教育を充実させていくことが、今後ますます重要となると考えられます。小・中学校及び特別支援学校は、域内の教育資源として組み合わせられながら、肢体不自由児を含めた、域内の個々の子供の教育的ニーズに対応していくことが期待されています。
 本特集が、小・中学校での肢体不自由児の学びの充実を支える取組の参考としていただけることを心から願っています。

(徳永 亜希雄)

 

・巻頭言
小・中学校における肢体不自由教育への思い
大関  毅
茨城県立下妻特別支援学校長

・論説
小・中学校等における肢体不自由教育の推進と障害者制度改革
分藤 賢之
文部科学省初等中等教育局特別支援教育課
特別支援教育調査官

小・中学校における肢体不自由教育の充実と特別支援学校への期待
安藤 隆男
筑波大学人間系教授・人間学群長


・実践報告
小学校における肢体不自由教育
―新たに開設された肢体不自由特別支援学級の現在と今後について―
大嶺 武也
京都市立第三錦林小学校教諭


小・中学校での肢体不自由教育への特別支援学校としてのかかわり
―担当者の勉強会支援と居住地校交流の取組―
メ田 裕子
愛知県立豊橋特別支援学校教諭


中学校における肢体不自由教育
―学校全体で取り組む指導体制―
照本 忠光
姫路市立飾磨中部中学校長

・研究大会報告
第38回大会を終えて
田添 敦孝
大会会長(東京都立光明特別支援学校長)
研究大会概要

・連載講座
学習到達度チェックリストとその活用(3)
発達段階に基づく学びの順序性
―乳幼児研究を手がかりに―
徳永  豊
福岡大学人文学部教授
・講座Q&A
高次脳機能障害の子供への支援

・活動紹介
スポーツを創造する
―アダプテッド・スポーツの理解と普及を目指して―
曽根 裕二
大阪体育大学健康福祉学部講師
・基礎知識
障害児・者を取り巻く国内外の動向 3
障害者虐待防止法の概要とその課題
朝日 雅也
埼玉県立大学教授
・ちょっといい話 私の工夫
身近な素材を使った学習の展開
山本  武
静岡県立中央特別支援学校教諭
・学校保健と医療的ケアの今
学校で行う口腔ケア その2
菊池 重成
きくち歯科医院院長(東京都新宿区)
・特別支援教育の動向
インクルーシブ教育システム構築支援データベース
長沼 俊夫
独立行政法人国立特別支援教育総合研究所 総括研究員
・トピックス
第31回障害児摂食指導講習会
本研究会評議員を委嘱
 
・読者の声
 
新しい学びへ
杉原 大輔
山口県立周南総合支援学校教諭

 平成25年度、本校では山口県の指定を受け、タブレット端末を用いた肢体不自由児への授業実践について全校体制で取り組みました。私は、ICT担当教員として、授業への利用の普及のために、校内研修の充実や授業導入のための教員への利活用サポートなどを行いました。研修部との連携により、様々な障害の程度に応じた授業実践をすることができました。
 肢体不自由に関する支援機器は、以前より多くの種類がありましたが、タブレット端末の普及により、より身近に支援機器を使える条件が整い、本校でも子供たちの姿にたくさんの変化が見られました。
 書くことに時間がかかって作文の学習に抵抗感を示していた児童が、フリック入力を覚えて、生き生きと文書を書くようになりました。また、学習にやや消極的だった児童は、スイッチを押すと画面に変化がおきることに気づき、教員に笑顔を見せながら、何度もスイッチを押すようになりました。その他、たくさんの子供たちの満足そうな表情からも、タブレット端末を必要なツールの一つとして当たり前に使えるものにしたいという願いを強くもちました。
 本誌には、最新の動向や、全国の先生方の細やかな実践が掲載されており、興味深く学びながら、授業実践に生かすことができます。
 今年度、長期研究生として、山口大学で1年間学ばせていただいています。本誌に寄稿されている先生方のように、常に学び、挑戦し、子供たちの思いを形にできる教員として成長できるように取り組みたいと考えています。


豊かな学びのための教材・教具

田中 邦治
群馬県立二葉養護学校教諭

 特別支援教育において、教材・教具とは、子供たちの思考や行動を引き出し、主体的な活動や参加を促す合理的配慮の一つだと考えることができます。ですから、子供たちが生き生きと学習していくためには、子供の実態や活動場面などの様々な要素を整理しつつ、一人ひとりの子供に合わせた教材・教具の工夫が必要不可欠となります。
 本校では、学校生活の様々な場面で、一人ひとりの子供のユニークな発信を支援し、その子供に分かりやすい方法でフィードバックしていくことで、子供たちのコミュニケーションを豊かにし、家庭や地域の中でも、子供たち自身が自己決定や自己選択を行い、主体的に活動に参加できる力を育むことを目指して実践を行っています。
 本校では、子供たちへの支援の選択肢を広げるために、教材教具部が中心となり、情報発信のための研修会や学習会、自作教材集の作成、教材展示、教材制作会などの取組を行っています。教材製作会では、平成25年度より保護者も参加して、一緒に教材の製作を行うようになりました。子供たちが、「できるようになったこと」「好きになったこと」を家庭や地域でも行えるように、また、教師や保護者がアイデアを出し合うことで、より一人ひとりの子供に合った教材の製作や使い方などの工夫ができ、活用の場や支援の輪が広がってきています。
 子供たちが生き生きと生活する姿がたくさん見られるように、今後もこの取組を充実させていこうと思います。


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・お知らせ
 
■次号予告
■編集後記