日本肢体不自由教育研究会
 

肢体不自由教育 No.221

ICTを活用したコミュニケーション支援

 近年、障害のある子供たちへのICTの活用が注目されています。ICTの活用によって、子供たちの障害特性や発達等に応じた様々な効果が期待されています。本号では、コミュニケーション支援に焦点を当てた特集としました。
 巻頭言では、コミュニケーションや学習の課題を明確にしてICTを活用することの大切さを三室先生が論じています。論説では、肢体不自由教育におけるICT活用の現状と課題及びアセスメントの詳細について論じていただきました。実践報告では、多様な子供たちへの活用の実際と、学校として組織的にICTを活用していくための校内研修を含めた取組について紹介しています。
 肢体不自由教育にかかわる先生方には、本特集号を参考にして、ICTの活用を進めていただきたいと思います。そして、豊かなコミュニケーションを育み、子供たちの可能性がより広がることを願っています。

(吉川 知夫)

 

・写真
副籍校にアンケートをとり、自分でまとめました。

・巻頭言
コミュニケーションを豊かにするICT
三室 秀雄
前東京都立光明特別支援学校長

・論説
肢体不自由教育におけるICT活用の現状と課題
金森 克浩
国立特別支援教育総合研究所 総括研究員

ICTを活用したコミュニケーション支援
−効果的な支援のためのアセスメント−
知念 洋美
千葉県千葉リハビリテーションセンター
リハビリテーション療法部 言語聴覚士

・実践報告
重度・重複障がい児におけるICTを活用した指導
−iPhoneを活用し「できる自分」へ−
上嶋 早苗
三重県立特別支援学校 北勢きらら学園教諭

視線入力装置を活用したコミュニケーション支援
谷本 式慶
東京都立八王子東特別支援学校指導教諭

加藤 洋一
東京都西部学校経営支援センター支所 学校経営支援担当課長
(前東京都立八王子東特別支援学校長)

ICT機器の組織的な活用のための取組
山口  飛
沖縄県立泡瀬特別支援学校教諭

自己表現を支えるICTの活用
−スイッチやVOCA、iPadを活用したコミュニケーションの指導−
内田 考洋
関口あさか
埼玉県立熊谷特別支援学校教諭


・連載講座
タブレットPCを活用した指導(2)
タブレットPCを使いやすくする工夫
新谷 洋介
国立特別支援教育総合研究所
教育情報部研究員
・講座Q&A
情報モラル教育

・活動紹介
展示を自分で楽しもう
−展示体験サポートツール「ウェルカム! ナビ」−
熊谷香菜子
日本科学未来館 科学コミュニケーター
・基礎知識
子どもの摂食嚥下障害を支援するための基礎知識 2
食べる機能の発達
田角  勝
昭和大学医学部小児科教授
・ちょっといい話 私の工夫
商品開発における支援の工夫
−パン甲子園への参加を通して−
牧野 文彦
北海道小平高等養護学校教諭 (前北海道岩見沢高等養護学校教諭)
・特別支援教育の動向
情報パッケージ(通称 ぱれっと)の開発研究
齊藤由美子
独立行政法人国立特別支援教育総合研究所 総括研究員
 
・読者の声
 
肢体不自由教育と動作法
増田 和泰
滋賀県立野洲養護学校教諭

 今から13年前、私が初任者の時に担当した子供は、レッシュ・ナイハン症候群と診断された小学部の児童でした。障害の特性から自分の意図とは関係なく過緊張になり、散歩等の好きな活動場面で身体が反って車いすに乗れないことも度々ありました。
 自分の思いとは裏腹に身体をコントロールできない姿に、どのように実践したらよいか悩みました。こうした中、職場の先輩に動作法の訓練会に誘われました。そこで、指導者と子供が共に動作課題に取り組み、緊張を緩めるなど子供が主体的に身体をコントロールする力を高め、適切な動作を学習することを学びました。
 学校でも担当の児童に動作法を用い継続して取り組む中で、姿勢がとれるだけでなく、過緊張になることが減りました。そして何より、児童が自分の身体への信頼感を高めたかのように、様々な介助場面で緊張をコントロールする姿が増えました。子供が自分の身体へ意識を向け、適切な動作を獲得していく過程は、まさしく自立活動の目標の、「障害による学習上又は生活上の困難を主体的に改善・克服する(特別支援学校の学習指導要領の一部抜粋)」に沿ったものだと思います。
 現在私は、自立活動の時間の指導だけではなく、書字や摂食動作の場面においても、学んだことを活かして取り組んでいます。
 今後も、子供の身体に働きかけるだけでなく、課題を達成していこうという意欲や身体への意識といった、子供の内面に働きかけることも大切にして、実践に励んでいきたいと思います。


自立活動における活動内容の選定、系統性とは

橋本 浩一
岐阜県立岐阜希望が丘特別支援学校教諭

 肢体不自由児を教育する特別支援学校では、重複障害学級の在籍率がとても高くなっています。本校でも、自立活動を主とした教育課程で学んでいる児童生徒が大多数を占めています。
 私も自立活動の指導をする機会が多くあります。そこで直面するのが、自立活動で何を指導するのかについての悩みです。
 悩んだ末に、目の前の子供の課題がたくさん目に付き、調和のとれた発達を促す為にと、その課題をどんどん増やしていきますが、いざ指導を始めていくと、用意した指導内容すべてを実施することができません。できたとしても、その子自身の力に本当になったのか、十分な指導ができたのか、私自身は、自信がもてませんでした。
 目の前の子の「出来ないこと」や、「出来そうなこと」という視点ばかりが強かったからではないかと、振り返ってみて思います。その子が、将来どういった生活をしたいのか、そして今、何を必要としているのか。学校や家庭、社会生活を営む姿を思い描くことが大切だったのではないでしょうか。
 平成26年度に発行された「肢体不自由教育」誌の、徳永豊先生の連載講座「学習到達度チェックリストとその活用」を拝読し、チェックリストを活用することで、実態把握や目標設定、活動内容選定に、客観性と系統性が加わると考えました。障害が重い子供こそ、「学ぶべきことは何か」を丁寧に捉え、系統的な「学び」を意識することが大切である、と思います。
 自立活動の活動内容選定の時に、子供の生活や学びを意識することから、活動内容を絞り込んでいくようにと考えています。


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