日本肢体不自由教育研究会
 

肢体不自由教育 No.222

学習評価を生かした授業

 子供は、毎日の学習によって新しい姿を見せてくれます。そこに教師の意図的な働きかけがあると、さらに新しい姿へと変身します。先生方は子供の学習の成果を的確に評価し、次の指導へとつなぐよう日々の授業研究に時間をかけていらっしゃると思います。
 今、次の学習指導要領の改訂に向けて、子供たちの学びをどう考えるか、という視点の転換が求められています。論説では、奈須先生に教育界全体の動向としての「コンピテンシー(資質・能力)・ベイス」の教育と学習評価について、また、徳永先生に「特別支援学校における学習評価」について述べていただきました。
 本特集号が、子供の「学び」と教師の「働きかけ」を振り返る一助となればと願っています。

(尾﨑美惠子)

 

・巻頭言
指導に生かす学習評価
根市 正彦
前青森県立八戸第一養護学校長

・論説
コンピテンシー・ベイスの教育と学習評価
奈須 正裕
上智大学総合人間科学部教授

特別支援学校における学習評価と授業改善について
徳永  豊
福岡大学人文学部教授

・実践報告
学習到達度チェックリストを活用した実態把握に基づく集団学習
児山 隆史
鳥取県立皆生養護学校教諭

障害の重い子供たちの指導
―学習習得状況把握表(GSH)を活用して―
柵山  徹
東京都立小平特別支援学校武蔵分教室教諭

小学校の各教科の目標・内容を中心とした教育課程における学習評価の取組
伊藤 紘樹
横浜市立東俣野特別支援学校教諭

・研究大会報告
第39回大会を終えて
西川 公司
大会会長
(特定非営利活動法人 日本肢体不自由教育研究会理事長)


・連載講座
タブレットPCを活用した指導(3)
タブレットPCの活用事例と教材の作成方法
新谷 洋介
国立特別支援教育総合研究所
教育情報部研究員
・講座Q&A
放課後等デイサービス

・活動紹介
地域に根ざし、地域とともにある療育
鯨岡 優子
社会福祉法人 青い鳥横須賀市療育相談センター通園課ひまわり園園長
・基礎知識
子どもの摂食嚥下障害を支援するための基礎知識 3
食形態と摂食嚥下障害
田角  勝
昭和大学医学部小児科教授
・ちょっといい話 私の工夫
初めて出会う子供との初日の向き合い方
―訪問教育の実践を通して―
於保 裕希
神奈川県立座間養護学校教諭
・特別支援教育の動向
支援機器等教材普及促進事業
「特別支援教育教材ポータルサイト(支援教材ポータル)」
金森 克浩
独立行政法人国立特別支援教育総合研究所 総括研究員
 
・読者の声
 
授業の実践について
山田 裕一
広島県立広島特別支援学校教諭

 広島県は、本校を含めて特別支援学校(肢体不自由)が3校あり、2年前より3校合同で「自立活動実践報告研究会」を行い、交流しています。また、本校は平成28年度から本県初となる「肢知併置校」となる予定で、全職員で準備を進めているところです。
 現在、私は小学部2年生の重度・重複障害のある子供たちの学級担任をしています。初めて重度・重複障害のある子供たちの学級担任になったのは5年前でした。重度・重複障害のある子供たちは肢体不自由や知的障害だけでなく、ときには視覚障害なども併せ有し、医療的ケアを必要とする場合もあります。当時、そのような子供たちと向き合った時に、どのような授業を実践したら良いのか本当に分かりませんでした。重度・重複障害のある子供たちの指導をしていくためには、教育の知識だけでなく、体の動きや発作のことなど医療的な知識も必要になります。
 今も授業は、試行錯誤しながら進めていますが、強く感じることがあります。それは、授業の目標や支援を考えるときに、それらを裏付けるための知識や情報が必要だということです。本誌には、肢体不自由教育に必要な基礎・基本だけではなく、多くの実践が掲載されていますので、授業の時に参考にしています。諸先輩方の実践から多くを学び、新しい知識や情報を取り入れたいです。
 肢体不自由教育について自分なりに日々の実践を積み重ね、いつか私も、誰かの参考となるより良い授業の実践をしていきたいです。


専門性を支える協働と語り合い

山田 聖人
福井県立福井特別支援学校教諭

 特別支援学校(肢体不自由)である本校は、「肢体不自由児者の学びと暮らしを支える学校づくり」をスクールプランに掲げ、 「肢体不自由児の自立と社会参加に向けた授業づくり」をテーマに、研究に取り組んでいます。
 学部を越えて研究したい内容が共通する教員同士がグループを編成し、研究に取り組む体制を取っています。グループごとに研究テーマを絞り込み、児童生徒の「自立と社会参加をどう捉え、どのような力をつけていけばよいか」について議論し合い、キャリア発達の視点を取り入れながら研究授業や授業研究会を行っています。
 近年では、「授業を見に行こうウィーク」という機会を設定し、校内でお互いの授業を見合いながら情報交換や実践の共有をしています。年度の節目には、校内で小グループ間協議やポスターセッションを行い、お互いの実践を語り合っています。福井大学や福井県特別支援教育センターの先生方が、アドバイザーとして研究授業・協議に参加することも増えました。
 私が校内研究推進係の一員として切に感じていることは、「授業実践と語り合い」が専門性を高める上での大事な基盤となることです。自ら授業を行い、自己研鑽するだけでは気付かない点も多く、子供の見方や捉え方が限定されてしまいます。授業者と参観者が集い、形式知や暗黙知を含めてお互いの実践を語り合うことで生まれる「新たな気付き」が、専門性ないし授業力を高めるきっかけとなっていると感じます。
 決して自らの実践のみに捉われることなく、専門性を支えるために仲間と協働し、子供について語り合いながら、子供の指導に当たっていきたいと思います。


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