日本肢体不自由教育研究会
 

肢体不自由教育 No.223

教科等を合わせた指導の充実

 多くの特別支援学校(肢体不自由)で、各教科等を合わせた指導が、行われていることと思います。私自身も生活単元学習の「縁日をしよう」の単元で、お店を企画して売り物を作ったり、実際にお店を開いたりする活動などに取り組んできました。子供たちの生き生きとした姿が見られ、指導する教員にとっても、楽しみな授業でした。
 分藤賢之先生と下山直人先生に、各教科等を合わせた指導の基本となる考え方を論じていただきました。改めて、特別支援学校の各教科の位置づけや、指導方法としての各教科等を合わせた指導の押さえと、指導内容の整理などについて学ぶことができました。また、実践報告も、なぜ各教科等を合わせて指導しているのかが示され、示唆に富んだものとなっています。
 各教科等を合わせた指導で、年間指導計画を作成してあるからといって、毎年同じことを繰り返すのではなく、子供たちの確かな学びの実現につながることを、切に願っています。

(武井 純子)

 

・写真
学校の近くにある、秋川消防署へ校外学習に行ってきました

・巻頭言
生きる力を育む各教科等を合わせた指導
─生活単元学習を通して考える─
飯野 順子
特定非営利活動法人地域ケアさぽーと研究所理事長

・論説
特別支援学校における各教科等を合わせた指導
分藤 賢之
文部科学省初等中等教育局特別支援教育課
 特別支援教育調査官

肢体不自由教育における各教科等を合わせた指導
下山 直人
筑波大学人間系教授
筑波大学附属久里浜特別支援学校長

・実践報告
教育課程モデルを基盤とした授業づくり
―「指導例集」を活用した「遊び活動」の授業づくり―
福沢 辰吾
青森県立八戸第一養護学校教諭

朝の会から見えてくる総合支援学校における「日常生活の指導」の取組
北福 浩章
京都市立西総合支援学校教諭

特別支援学校(肢体不自由)中学部における作業学習の実践
―キャリア教育につながる合わせた指導の実践―
佐藤 忠浩
秋田県立秋田きらり支援学校教諭

一人一人の自立と社会参加に向けた日常生活の指導
―基本的生活習慣の形成を目指す中学部の実践を通して―
田中 康幸
鹿児島県立出水養護学校教諭


・連載講座
タブレットPCを活用した指導(4)
タブレットPCのコミュニケーションでの活用方法
新谷 洋介
国立特別支援教育総合研究所
教育情報部研究員
・講座Q&A
教育課程の評価

・特別支援教育の歩み
知的障害教育における「生活単元学習」の展開
名古屋恒彦
岩手大学教育学部教授
・基礎知識
子どもの摂食嚥下障害を支援するための基礎知識 4
食べるための道具
田角  勝
昭和大学医学部小児科教授
・ちょっといい話 私の工夫
外界からの刺激を受け止めやすくするための教材や環境設定の工夫
―「みる・きく・さわる」の学習から―
松井佐和香
鳥取県立皆生養護学校教諭
・特別支援教育の動向
全肢P・校長会合同研究大会(熊本大会)報告
竹内ふき子
全国肢体不自由特別支援学校PTA連合会会長
 
・読者の声
 
関わり方を見直す
敷島 孝太
大分県立別府支援学校教諭

 本校では、生きる力に着目し、「豊かな生活の基盤作り」について研修を進めてきました。日常生活の中で全介助を必要とする子供は、受け身の生活になりがちです。「遊びたい」という気持があっても、表出することが難しく、その結果、様々な体験自体減る恐れがあります。
 このような現状から、私が担当する学習グループでは、障がいの重い児童を対象に、「意思表示やサインの獲得」を促す支援について、指導・支援を検討していきました。具体的には、インリアルアプローチの手法を参考にして、支援者側の関わり方を見直し、日々の働きかけをビデオ分析で振り返り、支援を改善していきました。
 私の担当児童には、「もう1回遊びたい」のサインとして、教師の手にタッチすることを目指した指導を行いました。ビデオ分析から、グループの先生方に意見をいただき、児童の姿勢や自分がかざす手の位置、声掛けのタイミングなど、これまで見逃していた部分が多くあったことに気づかされました。
 教員間で共通理解し、改善を繰り返すことで、児童を見る目が鍛えられ、小さな反応に気づき、それに応えることができるようになりました。結果的に、児童の伝えたいという意欲が増し、タッチの強化につながりました。児童の意思をくみ取り、応えることは、学校現場では、絶え間なく行っているアプローチです。
 児童の成長に合わせて、私たちもアプローチの方法を見直し改善していくことで、豊かな生活にもつながると思います。


温かい職場に感謝

小野 隆章
岡山県立岡山支援学校教諭

 本校は、昭和36年に県内最初の肢体不自由養護学校として開校し、本年度で創立54年目を迎えます。学区は県内全域で、自宅や寄宿舎から通学する児童生徒をはじめ、隣接する旭川荘療育・医療センターの療育施設から通学する児童生徒もいます。
 本校では、創立50周年を機に、「ハッピー」というマスコットキャラクターが誕生しました。校舎に遊びにやって来る青いイソヒヨドリがモデルになっており、行事があるたびに、「ハッピー」はみんなの前に登場します。
 この「ハッピー」は、みんなを幸せにする4つ葉のクローバーをくわえています。①心豊かに生きる、②健やかに生きる、③自ら学び生きる、④つながって生きる、これらの合い言葉を、4つの葉の1枚1枚にのせ、本校の教育目標やめざす子ども像を、保護者をはじめ校外に発信しています。
 着ぐるみが苦手な児童も「ハッピー」なら自然に受け入れられるようで、抱きついたり、話しかけたりとほっこりした場面がみられます。この温もりのある場面が、みんなを優しい気持にさせてくれます。
 「ハッピー」の誕生後、はずみがついたように有志での自主学習がスタートしました。仕事の合間をぬって、ベテランの教師を中心にミニ研修をしています。普段なかなか聞くことができないことでも、ミニ研修の場なら遠慮なく尋ねることができる雰囲気があり、現在では若手の先生も中心となり和気あいあいと進めています。
 この温かい職場の雰囲気、私は大好きです。働きやすい環境を作ってくださっている皆さんに感謝しています。


・図書紹介
・トピックス
・お知らせ
 
■次号予告
■編集後記