日本肢体不自由教育研究会
 

肢体不自由教育 No.225

キャリア教育の充実

 学校では、「キャリア教育」の充実を目指して、全体計画を立案し、チームで共有しながら日々の授業が展開されていることでしょう。
 初めに、吉村先生の巻頭言では、「生きる」「働く」を考える素敵なエピソードの紹介がありました。そして、菊地先生、下山先生の論説では、実践例を交えて詳細な解説がありました。「肢体不自由教育におけるキャリア教育とは?」という疑問に対して、菊地先生からは、「授業者自身の実践そのものにある」という示唆に富んだ回答をいただきました。
 また、各学校からは、キャリア発達を促す教育として、①なぜ、何を教えるのか、②どのように教えるのか、③子供は何を学ぶことができるのか、についての実践報告がありました。ぜひ、振り返りの視点として参考にしていただければうれしく思います。
 本特集号を何度も読み返し、「はじめに子供ありき」の発想が重要であることを改めて実感しました。

(尾﨑  至)

 

・巻頭言
「働くこと」のほんとうの意味を求めて
吉村  匡
愛知県立岡崎特別支援学校長

・論説
肢体不自由のある児童生徒のキャリア発達支援
─共生社会の形成に向けたキャリア教育推進の意義を踏まえて─
菊地 一文
青森県教育庁学校教育課特別支援教育推進室指導主事

肢体不自由におけるキャリア教育の充実
下山 直人
筑波大学人間系教授筑波大学附属久里浜特別支援学校長

・実践報告
児童生徒のキャリア発達に迫る授業づくりにむけて
─きららのキャリア教育プランを考える全校での取組─
橋本  恵
三重県立特別支援学校北勢きらら学園教諭

卒業後を見据えたキャリア教育の展開
─高等部における職場実習を中心に─
加藤 隆芳
筑波大学附属桐が丘特別支援学校教諭

キャリア発達を育む授業づくり
米田 容子
富山県高岡市立こまどり支援学校教諭

キャリア教育の視点を取り入れた授業の充実
本田麻衣子
青森県立青森第二高等養護学校教諭
(前青森県立青森第一高等養護学校教諭)


・連載講座
小・中学校における肢体不自由教育(1)
小・中学校で学ぶ肢体不自由のある児童生徒の概況
徳永亜希雄
横浜国立大学教育人間科学部准教授
(前独立行政法人国立特別支援教育総合研究所 主任研究員)
・講座Q&A
福祉制度の活用

・感覚・運動を育てるための基礎知識 1
発達初期の感覚の働き方と運動の生じ方
川上 康則
東京都立青山特別支援学校主任教諭
・ちょっといい話 私の工夫
教具としてiPadを活用した実践
掛田 和久
茨城県立水戸特別支援学校教諭
・特別支援教育の動向
注視をしてほしい「特別支援教育」の動向
分藤 賢之
文部科学省初等中等教育局特別支援教育課
特別支援教育調査官

 
・読者の声
 
外部専門家の活用について
金澤 剛志
埼玉県立川島ひばりが丘
特別支援学校教諭


 私は現在、自立活動専任の教員として総合支援部に所属しています。本校における自立活動専任の主な仕事は、自立活動の「時間における指導」が中心です。その他にも摂食指導や、「新転任者研修会」「姿勢について」「自立活動指導集中研修会」「呼吸について」など様々な企画・実施も行っています。
 本校では、平成24年度から作業療法士による摂食指導の相談、27年度からは理学療法士による自立活動の指導の相談を、それぞれ行っています。学級担任の先生方は、医療的な立場から、指導内容や方法に関するアドバイスを受けることができますが、気をつけなければいけないのが、情報やアドバイスの内容をそのまま自立活動で指導していないかということです。外部専門家を活用していく中で、教員が主体となり、意見交換をしていかなければならないことを痛感しています。外部専門家との連携は、対等な関係で意見交換をしていくことが必要です。そのためには、やはり児童生徒の的確な実態把握が不可欠です。
 28年度以降も、外部専門家の行うことと、教育現場で行うことをしっかりと整理していけるように、自立活動専任として、学級担任と外部専門家を中立的な立場でつなぐような役割を担っていきたいと思います。今後も、校名につけられた町の鳥である「ひばり」のように、さらに高く羽ばたけるよう、自立活動専任として、学校全体の自立活動に対する理解を深め、専門性を高めていけるように邁進していきたいと思います。


災害時、そのとき特別支援学校は

田原 洋明
茨城県立協和
特別支援学校教諭


 前任校の特別支援学校(肢体不自由)である下妻特別支援学校(以下、本校)は、茨城県の西部、鬼怒川のほとりに位置し、緑豊かなところにあります。
 私は平成27年9月から、国立特別支援教育総合研究所の「特別支援教育専門研修」に参加させていただきました。研修が始まって一週間ほど過ぎた頃、食堂のテレビで衝撃的な映像を目にしました。見慣れた土地、本校の学区である地域が、洪水によって一面水浸しとなっていました。また、避難勧告や危険水位を知らせるテロップには、よく知った地名ばかりが並び、本校所在地や通勤路、私の居住地域も含まれていました。実際に自分の目で状況が見えないことで、様々なことを憶測してしまい、子供たちは大丈夫か、学校は、家族は、と、非常に大きな不安に襲われました。すぐに勤務校や家族に連絡を取りましたが、「大丈夫」とのこと。一安心したものの、なかなか不安は解消されませんでした。
 そのような中、共に研修を受けていた仲間たちから多くの声をかけていただき、助けていただきました。不安なときにかけてもらう言葉のあたたかさ、人とのつながりの大切さを痛感しました。
 研修を終えて職場復帰し、様々な方から当時の状況を伺いましたが、やはり大変な状況であったと聞きます。今回の災害を通して、正確な情報の収集の大切さを改めて感じました。
 また、本校は福祉避難所となっていたこともあり、特別支援学校として何ができるか、どんな対策を講じるべきかを普段から市や警察、消防、医療機関等と連携しながら、地域の特性を加味して考えておく必要性を再確認しました。


・図書紹介
・トピックス
 
■次号予告
■編集後記