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肢体不自由教育 No.226
食べる力を育てる摂食指導
今年度も本校に十数名の小学部1年生が入学しました。母親が一緒にいないと泣いて食べなかったA君。学級担任が、母親と共に日々試行錯誤しながら、ひと月が経ちました。やっと、学級担任の介助で一定量を食べるようになり、安全に安心して食べるための指導がスタートしました。会員の先生方の中にも、このような思いで新学期を迎えて、どのように指導していこうかと、悩む方も多いと思います。
本特集号では、食べる機能を育てるための取組を報告しています。校内組織、食形態、調理方法の見直し、他職種との連携など、まさに学校現場が直面している課題ばかりです。
摂食指導の実践は教職員だけでなく、他職種とも関わる中で、日々積み重なっていきます。子供のわずかな成長を見つけ、また新たな課題に向って取り組む、このような繰り返しが続くからこそ、私たちは摂食指導を学びたくなるのではないでしょうか。
本特集号が日々の摂食指導の参考になれば幸いです。
(木村 直美) |
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- ・写真
- 新入生歓迎会での
FISHING GAME !
大漁でした!
- ・巻頭言
- 安全で 楽しく 豊かに
- 及川 求
岩手県立盛岡となん支援学校長
- ・論説
- 食べる力を育てる
─摂食指導の基礎・基本─
- 田村 文誉
日本歯科大学口腔リハビリテーション
多摩クリニック 教授
- ・実践報告
- 咀嚼の力を育てる
─食形態の工夫を中心に─
- 藤塚 理江
岐阜県立関特別支援学校教諭
- 校内摂食相談
─スクリーニング機能をもつ口腔機能チェックシートとその活用─
- 青木 菜摘
東京都立あきる野学園教諭
- 友達と食べるとおいしいな
─拒食傾向のある子供への取組から─
- 小林 由香
山梨県立あけぼの支援学校教諭
- 食形態改善に向けた取組
─食指導委員会の活動を中心に─
- 中島 裕子
福島県立郡山養護学校教諭
・連載講座
- 小・中学校における肢体不自由教育(2)
小・中学校に在籍する肢体
不自由児への配慮や環境整備等
- 徳永亜希雄
横浜国立大学教育人間科学部准教授
(前独立行政法人国立特別支援教育総合研究所 主任研究員)
- ・講座Q&A
- アンガーマネージメント
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・感覚・運動を育てるための基礎知識 2
実態把握と授業づくりに役立てる「触覚」に関する基礎知識
川上 康則
東京都立青山特別支援学校主任教諭
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- ・ちょっといい話 私の工夫
- 音声言語に困難がある児童生徒のための教材の工夫と指導実践
―自作教材「顔写真付き指名装置」を使用して―
- 高橋 篤
青森県立青森第一養護学校教諭
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- ・特別支援教育の動向
- 小・中学校に在籍する肢
体不自由児のための
特別支援学校のセンター的機能の活用に関する
研究
─小・中学校側の
ニーズを踏まえて─
- 長沼 俊夫
独立行政法人国立特別支援教育総合研究所 総括研究員
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- ・読者の声
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- 連携の在り方
- 石井 憲太郎
鳥取県立鳥取養護学校教諭
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平成27年度の研修で、東京都の施設で勤務されている作業療法士の方から、お話を伺う機会がありました。その中で、「学校から依頼されて、授業や子供の様子を見にいって、医療の立場から提案等をすることはできるが、医療が踏み込めるラインには限界がある。ここからは学校がすべきことというように、それぞれの立場や考え方を大事にした連携をしていきたい。」というお話がありました。
このお話から、一人ひとりの児童生徒を中心に置いてその周りを各関係機関が囲む図をイメージし、それぞれが専門性を発揮して児童生徒に関わっていくことで、児童生徒のよりよい姿をめざしていくことができることを学びました。
私は、肢体不自由児の特性である運動や動作面の課題に関して、医療面だけではなく、教育としてどう関われるのかを考えながら、各地で開催されている感覚や運動の分野に関するキャンプや研修会等に参加しヒントを得ています。
医療と連携する際に私が大事にしていることは、医療の視点からどう考えるかを問うということです。医療側の見解を一方的に聞くばかりでなく、この指導を行う意図を伝え、それについて意見を交わし合える、そんな連携の仕方ができたらと思っています。
そのためにも研修等に参加して、自らのスキルを高める努力を怠らないようにしたいと考えています。
「熊本地震」の経験から考える特別支援教育
- 近藤 智治
熊本県立熊本かがやきの森支援学校教諭
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本校は、熊本市の西部に位置し、熊本城が見わたせる緑豊かな丘の上にあります。
期待や希望を胸一杯に詰め込み、清々しい表情の児童生徒を迎え入れてスタートした新年度。その矢先、4月14日と16日の二度にわたる大地震が本県を襲いました。その地震は、言葉に尽くしがたいほど多くの、そして大きな傷あとを残しました。倒壊した家屋、陥没し亀裂の入った道路、そんな状況下に身を置くことで、これまで当たり前だと思っていたことが、当たり前で無くなる不安や恐怖、そして不自由さを痛感しました。
今回、当たり前のことが当たり前でなくなることを体験したことで、自分の障がい観を再考する機会となりました。当たり前のこと、それは、周囲の環境によって担保されているもので、我々も環境によって、普段通りの生活ができたり、できなくなったりするのです。
それは、特別支援教育を必要とする子供たちにも言えることです。その子自身の力を伸ばすことはもちろんですが、その子の周囲の環境を整えることで、出来ない、難しいと思われていたことが出来るようになっていくということを、一層強く感じました。
そして、我々教師も、子供を取り巻く環境の一つなのだと。子供ができないのではなく、当たり前にできるために、様々な環境を整え支援していくことの大切さを再確認しました。
最後に、本校は臨時避難場所として、地域の方々や本校児童生徒の避難場所となりました。多くの皆様から温かいお心遣いをいただき本当に感謝しております。本誌面をお借りしてお礼申し上げます。
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・図書紹介
- ・トピックス
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■次号予告
■編集後記
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