日本肢体不自由教育研究会
 

肢体不自由教育 No.227

インクルーシブ教育システムと肢体不自由教育

 本号では、インクルーシブ教育システムと肢体不自由教育について特集を組みました。まず巻頭言として幅広い視野からインクルーシブ教育システムについて述べていただいた後、論説では、全体の枠組みや今後の方向性について論じていただきました。実践報告では、多様な学び方、教育資源の組み合わせ方の例として、副次的な学籍の小学校との交流及び共同学習を活用した特別支援学校児童の学びの取組や、学校内外の資源を活用した小学校児童の学びの取組、特別支援学校の通級による指導を活用した学びの取組を紹介していただきました。
 また、インクルーシブ教育システムを展開する上では、教職員の専門性の向上がますます重要とされます。そのことに資する本研究会の第40回日本肢体不自由教育研究大会についても、本号で報告しています。
 これらの内容が、肢体不自由のある子供の一人一人の学びの充実のために、参考にしていただけることを心から願っています。

(徳永 亜希雄)

 

・巻頭言
インクルーシブ教育システムの構築と創発的戦略
中田 正敏
明星大学教育学部講師

・論説
インクルーシブ教育システム構築における肢体不自由教育の進展
分藤 賢之
文部科学省初等中等教育局特別支援教育課 特別支援教育調査官

合理的配慮と基礎的環境整備と肢体不自由教育の方向性
木舩 憲幸
大谷大学文学部教授

・実践報告
「支援籍」を活用した交流及び共同学習
山内 明美
埼玉県立宮代特別支援学校教諭

学校内外の教育資源を活用した肢体不自由特別支援学級在籍児童への指導
大塚 素代
福岡市立福岡中央特別支援学校教諭
(前福岡市立城浜小学校教諭)

通級による指導(肢体不自由教育)の実践
 ―「先生がね、ほめてくれたよ」Aさんの事例を通して─
川本 容子
千葉県立袖ケ浦特別支援学校教諭

・研究大会報告
第40回日本肢体不自由教育研究大会を終えて
西川 公司
大会会長
(特定非営利活動法人 日本肢体不自由教育研究会理事長)

研究大会概要

・連載講座
小・中学校における肢体不自由教育(3)
これまでの実践報告等に学ぶ
徳永亜希雄
横浜国立大学教育人間科学部准教授
(前独立行政法人国立特別支援教育総合研究所 主任研究員)
・講座Q&A
外部専門家との連携

・感覚・運動を育てるための基礎知識 3
実態把握と授業づくりに役立てる  「前庭感覚」に関する基礎知識
川上 康則
東京都立青山特別支援学校主任教諭
・ちょっといい話 私の工夫
「いきいき動作」でストレス・ケア
─授業で学び、日常生活で活かす─
齊藤 博之
山形県立ゆきわり養護学校教諭
・特別支援教育の動向
広島県における特別支援教育の推進
内田 俊行
広島県教育委員会事務局教育部特別支援教育課指導主事

 
・読者の声
 
知肢併置校
隈田原 聡
宮崎県立児湯るぴなす支援学校教諭


 10年間勤務した特別支援学校(肢体不自由)から知肢併置校〈特別支援(知的障がい・肢体不自由)〉に転勤して、4か月が過ぎました。
 知肢併置校といっても、児童生徒の7割弱は知的障がいのみの子供たちです。おのずと学校の流れそのものが、彼らを中心に進んでしまいがちです。そのような中で、一緒に遠足や運動会などを実施するため、重度・重複障がいのある子供たちにとっては、その活動の意味や意義、参加形態など、指導上検討しなければならない課題がたくさん出てきます。
 このような状況の中で大切なことは、「軽度の知的障がいのある子供たちから、重度の肢体不自由のある子供たちまでが、一緒に学び合い育ちあうためにはどうすればよいのか?」を考えて考えて、考え続けることです。「こんなやり方だったらどう?」「この子もあの子も、輝けるやり方ってあるのかな?」などです。今の職場の仲間は、いつも真剣に悩み、考え、なんとか答えを導きだそうと苦心しています。私と同じ立場や方向性で悩みを共有し、問題解決に尽力してくれる仲間の大切さを改めて感じています。
 知的障がいのある子供たちだけの活動や、肢体不自由のある子供たちだけの活動も大切です。しかしながら、知肢併置校だからこそできる活動や行事、支援の在り方を大切にし、今後も仲間と協力しながら考えていきたいと思います。


特別支援学校の専門性

荒井 美聡
北海道平取養護学校教諭


 平成28年4月より、「障害を理由とする差別を解消する法律」が施行されました。共生社会の実現に向け、障がいのある児童生徒の就学先が多様化する中、特別支援学校の専門性とはどういうことなのか考えています。
 現在、私は特別支援教育コーディネーターとして、地域の小・中学校を訪問して学校支援、教員支援を担当しています。地域の学校には実に様々な「困り感」を抱えた子供が在籍しています。肢体不自由のある子供、不器用さのある知的障がいの子供、知的な理解が高く発達障がいを抱えた子供、家族支援が必要なケースなどです。
 地域の学校はこれらの多様な「困り感」に対応し、その中で支援を工夫しながら、障がいの有無や軽重に関わらず指導にあたっています。
 北海道という地域の特性もありますが、地域で教育を受けるニーズがとても強くなっていることを感じます。特別支援学校が、単に障がいのある子供が通う学校ではなく、多様な学びの場の一つになっている今、障害種や程度にとらわれない様々なニーズに対応することが求められています。さらに言えば、参加を平等にするに留まらない、公平で確かな学びを提供することが重要となっています。
 このような状況の変化の中で、特別支援学校の専門性は、その質を問われ、とても高いものが求められるようになってきていると感じます。どのような状態の子供にもベストな学びを提供するプロフェッショナルな集団の組織であること、それがこれからの特別支援学校に求められる専門性であると考えます。


・図書紹介
・トピックス
 
■次号予告
■編集後記