日本肢体不自由教育研究会
 

肢体不自由教育 No.234

表現力を育てる芸術活動

  本号では、「表現力を育てる芸術活動」を特集のテーマとしました。絵画や写真、造形など美術的な実践の指導が中心となりました。
 本号で紹介したそれぞれの実践では、肢体不自由のある子供たちが、表現活動をとおして経験を広げるとともに、自信を高め、新たな芸術作品を作り出す達成感を感じている様子が、生き生きと伝わってきました。授業の中で、様々な方法で子供の表現を引き出す工夫がなされている様子が、とても印象的でした。
 巻頭言の岡部さんが、「表現をするとは、人と関わること、つながること」とおっしゃっていましたが、それぞれの実践では、子供たちが鑑賞や作品展を含む芸術活動をとおして、様々な立場の人たちとつながっていました。
 肢体不自由のある子供一人一人が芸術活動をとおして自己肯定感を高め、日々の生活を充実させるために、本号の実践を参考としていただけることを心から願っています。

(熊井戸佳之)

 

・巻頭言
芸術活動を通して人とつながる
岡部  彩
東京都立村山養護学校卒業生
みなと保育サポート東麻布非常勤職員

・論説
肢体不自由教育における造形表現活動の意義
永江 智尚
愛知教育大学教育学部専任講師

特別支援学校における芸術活動の意義と実践
鈴木 文治
田園調布学園大学人間福祉学部教授
(元神奈川県立麻生養護学校長)

・実践報告
大学と連携した造形活動
南雲 まき
金沢学院大学文学部専任講師
(元東京学芸大学研究員、
元東京都立小平特別支援学校武蔵分教室教諭)

卒業後の余暇活動の充実につながる写真による授業
 ―自分に「気づき」をもたらす美術教育について―
佐々木昌功
愛知県立港特別支援学校教諭

表現する力を引き出すパソコンを使った絵画制作の工夫
野本 晃希
長崎県立佐世保特別支援学校
肢体不自由教育部門高等部主事

「本物」に触れることを重視した絵画の指導
上杉 汐輝
宮崎県立清武せいりゅう支援学校教諭



・連載講座
教科指導における障害特性を踏まえた指導・支援のコツ(5)
 「事象」「比較」「関連」「特色」に重点を置いた社会科の指導
石田 周子
筑波大学附属桐が丘特別支援学校教諭
・講座Q&A
発音が不明瞭な児童への指導

・コミュニケーション指導の基礎知識 5
障害の重い子供の指導事例
吉川 知夫
国立特別支援教育総合研究所主任研究員
・ちょっといい話 私の工夫
ICFの理念を教育に活かす
 ─関連図とチェックリストから教育内容を考える─
田中 豊一
北海道釧路市立愛国小学校教諭
(前北海道白糠養護学校教諭)
・特別支援教育の動向
第63回全国肢体不自由教育研究協議会
 
・読者の声
 
学部を超えた授業研究
伊澤 理絵
青森県立八戸第一養護学校教諭


 特別支援学校(肢体不自由)である本校では、約130名の児童生徒が学んでいます。私自身、本校への勤務は二度目となりました。準ずる教育課程を担当するようになった今、本誌を開くたびに、姿勢、摂食、認知特性のいずれも、どの教育課程の指導にも必要な専門性であることを、改めて教えていただいています。
 2年後に、全国肢体不自由教育研究協議会開催を控えている本校の研究について紹介します。本校では、学部を超えた授業研究を行っています。同類型約40名の教員による一斉での授業参観は難しいため、ビデオ参観の方法も取り入れました。学部を越えて行うことの魅力は、各学部の考え方を理解し合えることや、12年間を通した児童生徒の姿について考えられること、等々です。
 平成29年度から3年計画で行っている校内研究では、キャリア教育とカリキュラム・マネジメントをキーワードに、類型毎に「育てたい力」を定め、「その力を育てる活動になっているか」「他の教科・領域で何がもっとできるか」に着目して授業検討会を行っています。「子供の夢を大切に」「個の長所を生かして」「社会に出る前に」など、学部によって視点の異なる内容だからこそ、話し合い、つながりを考える必要があります。
 二年後、来校してくださる方々に、「この力を育てるために、この活動で、この姿を引き出したい!」と、明確にお伝えできる授業を公開するために、これからも授業改善に努めて参ります。


コミュニケーション方法を共有する

尾之上直美
神奈川県立麻生養護学校教諭


 これまで27年間特別支援教育に携わるうち、20年は、主に重度・重複障害といわれる重度の肢体不自由と知的な遅れを併せ有する子供たちと過ごしてきました。子供たちは、音声言語による発語が難しく、その他のコミュニケーション手段もごく限られたり、手段を見つけることが課題だったりしました。でも、発語がなくても、一人ひとりが自分の「言葉」をもち、認知力以上に「内言語」をもつことを感じてきました。
 その一人ひとりと向き合い共に過ごしていると、子供の心から思いが溢れているのを感じます。その思いを、私が言葉にすると、子供は分かってくれる人がいると感じ、私も思いを共有できると感じました。分かってもらえることの積み重ねにより、子供の伝えたい気持が高まり、そこから初めて、子供が発信する方法を模索し始めるのを感じます。
 例えば、瞬きする、黒目をくるりと動かす、まぶたをわずかに震わせるなどです。また、人工呼吸器を使う子供の場合は、自発呼吸をする、呼気に力を入れて人工呼吸器のリークを強めるといった方法を使うようになり、その方法を「YES」、その方法でないときは「NO」とするところからスタートしました。このような方法で、子供が主体者として思いを伝えるようになると、瞼の縁をヒラヒラさせる、呼気に強弱をつける等、伝える感情や要求の広がりと共に方法も広がり、私が意図を理解できないと怒るようにもなりました。
 やり取りできることで学習内容が広がり、子供の世界が豊かになっていくのを感じます。今後も細やかなやり取りを大切にしていきたいと思っています。


・図書紹介
・平成29年度総目次
 
■次号予告
■編集後記