日本肢体不自由教育研究会
 

肢体不自由教育 No.235

コミュニケーションの力を育てる

  「コミュニケーションってどんなこと」と聞かれた時、読者の皆様ならどう答えるでしょうか。改めて聞かれると、少し悩むことと思います。私の周囲の方に同じ質問をしてみると、概ね「伝達」ということが多かったです。しかし、特別支援教育においては「共有・共感」という非言語的なコミュニケーションも、大切な手段となります。自分の思いを「伝達」し、「共有・共感」してもらえる喜びは、とても大きいものです。
 本特集号は、子供たちのコミュニケーション力を育てるため、日々の授業でどのような工夫が必要かを考えました。
 論説では、コミュニケーション指導にあたっての基本的な知識や指導内容、評価の観点等について述べていただきました。実践報告では、コミュニケーションの力を高めるための校内体制、集団での授業、身体やAACの活用など、様々な方法での実践事例を報告していただきました。
 本特集号を参考に、子供たちの豊かなコミュニケーションの力を育んでいただけることを願っています。

(渡邉 文俊)

 

・巻頭言
コミュニケーションの基礎は「通じ合い」「分かり合い」にある
鯨岡  峻
京都大学名誉教授

・論説
障害の重い子どものコミュニケーションの力を育てる
細渕 富夫
埼玉大学教育学部教授

肢体不自由児のコミュニケーションの支援
吉川 知夫
国立特別支援教育総合研究所総括研究員

・実践報告
コミュニケーション支援における校内体制とその展開
別所 邦彦
岐阜県大野町立大野小学校教諭
(前岐阜県立岐阜希望が丘特別支援学校教諭)

コミュニケーションを引き出す授業づくり
橋 美由紀
石川県立盲学校教諭
(前石川県立いしかわ特別支援学校教諭)

身体を介したかかわりの中でコミュニケーション力の向上を図る
 ―自立活動専任教員の校内支援から―
出井 一紀
埼玉県立蓮田特別支援学校教諭

機器を活用したコミュニケーション支援と導入のポイント
外山世志之
東京都立光明学園指導教諭
(前東京都立町田の丘学園指導教諭)



・連載講座
算数・数学につながる数の指導(1)
 指導の系統性と肢体不自由児にみられる困難
川間健之介
筑波大学人間系教授
・トピックス
平成30年度 特別支援教育関係研究会の予定
・講座Q&A
外反扁平足について

・小児リハビリテーションの基礎知識 1
リハビリテーションの基本─教育との連携のために─
西方 浩一
文京学院大学保健医療技術学部准教授
・ちょっといい話 私の工夫
児童生徒と複数の教員の目で捉える自立活動
 ─チャレンジタイムの取組─
佐仲 健吾
長崎県立諫早特別支援学校教諭
・取組紹介
もっともっと話をしよう!
 ─「埼玉県自立活動カンファレンス」の取組─
渡邉 文俊
埼玉県自立活動カンファレンス代表
埼玉県立川島ひばりが丘特別支援学校主幹教諭
(前埼玉県立熊谷特別支援学校教諭)
 
・読者の声
 
わくわく体験の紹介
黒田 里理
鳥取県立皆生養護学校教諭


 「わくわく体験でやっていましたね!」アフリカの話をしていた時、ふいに生徒が満面の笑顔でそう呟きました。本校は、幼稚部から高等部までの66人の子供たちが通う、肢体不自由と病弱の子供たちを対象とする特別支援学校です。「わくわく体験」については、本誌第194号でも掲載させていただいたことがあります。障がいがあることで、生活の中で人と関わったり物に触れたりする機会が限られている子供たちに、そのような機会を提供し、興味・関心の幅を広げ、読書や学習に活かすことをねらう取組です。
 学期ごとにテーマを設けており、昨年度の1学期は「異文化を楽しもう」として、JICA(国際協力機構)に協力を依頼し、アフリカの「マラウイ」について学ぶ機会を設定しました。トウモロコシの粉を練って作ったマラウイ主食の「シマ」の手触りや、匂いを楽しむ体験をしました。調理法は、講師による自宅での調理の様子の動画で、知ることができました。
 また、色鮮やかな民族衣装をたくさんお借りし、子供たちは実際に身にまといながら、マラウイのお金や生活用品、楽器、スパイスに触れました。普段出会うことのない独特の香りを、表情豊かに味わう姿が心に残っています。
 こうした体験が心に残っていたのでしょう。冒頭で紹介した生徒がマラウイのことを思い出し呟いたのは、体験の半年後でした。これからも五感で触れる世界を提供しながら、子供たちに様々な心の種を蒔いていきたいです。


情報共有の大切さ

鳥澤 直矢
静岡県立中央特別支援学校教諭


 私が勤務する静岡県立中央特別支援学校(肢体不自由特別支援学校)の高等部は、生徒数70名、教員数50名となっています。
 高等部には、7つの学習グループがあり、当該学年の各教科を中心に学んでいる生徒や、自立活動を主として学習している生徒等、それぞれの生徒の実態に合わせた指導を行っています。
 授業時間には、教員は自分が所属する学習グループの授業の他に、他グループの授業に入り、指導を行うことが多くあります(例えば、教科グループ所属の教員が、自立活動グループの授業に入り指導を行います。)。
 グループを越えて指導をするので、生徒への指導方法等の情報共有を教員間ですることは、とても大切となります。
 情報共有がなされていないと、どこまで指導をすれば良いのかが分からず、指導が不足したり、多すぎたりします。また、指導方針や育てたい力が分からず、場当たり的な指導になってしまいます。
 本校高等部でも、年度が変わってすぐの時期は、このような課題が挙げられました。そこで、高等部の全教員で、指導目標や指導方法についての情報共有に取り組みました。この取組により、「情報共有をすることで、指導がしやすくなった」「先輩教員からアドバイスをもらうことができた」「一人で悩むことが無くなった」等の意見が聞かれ、指導改善に生かされたことが分かりました。
 今回の取組により、教員一人一人が、「情報共有の大切さ」を感じることができたと考えます。


・図書紹介
■次号予告
■編集後記