日本肢体不自由教育研究会
 

肢体不自由教育 No.238

医療的ケアにおける職種間連携

 かつて、たんの吸引等の行為を、医療職以外の者が行うのは違法という議論があり、そのころから医療的ケアに関する様々な取組が始まりました。違法性の阻却の判断や、非常勤看護師の配置、そして平成24年に、医療職以外の者による医療的ケアの実施が法制化されて、医療的ケアの課題は一区切りついたと言ってよいでしょう。医療的ケアに関するこれまでの変遷を、下川先生が詳しくまとめてくださいました。
 学校では、教員が医療的ケアを実施することで、子供との信頼関係が深まり、コミュニケーションの力を伸ばすことができました。だからこそ、教育として医療的ケアを行ってきました。加藤先生の実践報告は、学校における医療的ケアの基本を示してくださいました。
 ここ数年、高度な医療的ケアを必要とする子供の在籍が増えてきています。新たな課題ではありますが、医療的ケアのこれまでの取組に学ぶことも多いと思います。今回の特集が、新たな課題の解決の糸口を考える一助になれば幸いです。

(武井 純子)

 

・写真
総合的な学習の時間で、環境をテーマに学習に取り組んでいます

・巻頭言
学校における医療的ケアの課題
竹内ふき子
前全国肢体不自由特別支援学校PTA連合会会長

・論説
学校における医療的ケアの実施における今後の課題
田村康二朗
東京都立光明学園総括校長

医療的ケアのこれまで、これから
下川 和洋
NPO法人地域ケアさぽーと研究所理事

・解説
医療的ケアの基礎知識
立岡 祐司
東京都立東部療育センター小児科医師

・実践報告
コミュニケーションの力を育てる医療的ケア
―看護教員と連携して―
加藤留美子
埼玉県立川島ひばりが丘特別支援学校教諭

地域の小学校・中学校との連携のシステムづくり
大原 七生
千葉県立袖ケ浦特別支援学校主幹教諭

学校卒業後の子供たちを支える活動と医療
寺崎有仁子
NPO法人ひまわりプロジェクトチーム理事



・連載講座
算数・数学につながる数の指導(4)
 加法と減法の計算の指導
川間健之介
筑波大学人間系教授


・トピックス
「第43回日本肢体不自由教育研究大会」予告

・講座Q&A
意思決定支援
・小児リハビリテーションの基礎知識 4
障害を理解するための基礎知識
西方 浩一
文京学院大学保健医療技術学部准教授
・ちょっといい話 私の工夫
肢体不自由のある生徒達のボランティア部の取組
青木由紀子
福島県立平養護学校教諭
・特別支援教育の動向
第61回全国肢体不自由特別支援学校PTA連合会総会
およびPTA・校長会合同研究大会 (福井大会)報告
澤村  愛
全国肢体不自由特別支援学校PTA連合会会長
 
・読者の声
 
教育と医療の近い関係づくり
千葉 明子
茨城県立下妻特別支援学校教諭


 3年前に本校に赴任して、児童生徒の障害の状態の重度化に驚きました。医療的ケアが必要であったり、発作が頻回であったりする児童生徒の指導をどう行っていけばよいのか考えさせられ、こんなにも医療と近くなっていたのかと改めて感じました。
 本校では、理学療法士等の先生方に外部専門家として学校に来ていただき、発達を見据えた日常生活動作や自立活動の指導について助言をいただいています。私は「自立活動支援係」として、相談事例についての調整をする等、学級担任と外部専門家の間をつなぐ役目を担っています。
 係になったことで、理学療法士や作業療法士、医師の先生方と顔を合わせたり話したりする機会が多くなりました。顔が分かると話しやすくなりました。
 幸い医療側の先生方も、私たち教員が学校で何を知りたいのか、何を困っているのかを話してほしい、とおっしゃっています。これも「小児リハ・サポートネット」という本校が事務局となり、「教育と医療が連携できる場」を、先輩達が作ってきてくださったことが大きいと感じています。
 児童生徒がいる環境が医療と近いというだけでなく、児童生徒の成長や発達を見据えた、理想的な「教育と医療のよりよい連携」のできる関係作りをしていきながら、自立活動の指導の充実を図っていきたいと思います。


スポーツは、やって楽しみ、見て楽しみ

齋藤 恵理
山梨県立あけぼの支援学校教諭


  本校に赴任して4年目になりました。現在、学級担任をしているグループは、5年生と6年生の子供たち6人のグループで、毎日にぎやかです。
 この夏、日本肢体不自由教育研究会の研究大会でアダプテッドスポーツの研修に参加しました。ちょうど今年3月に、大学を卒業したばかりの同僚と、体育の授業をどうしようかと悩んでいたところでした。自分自身の身体を思い通りに動かすことが難しい子供たちが、運動を楽しく体験するにはどうしたらよいのだろう。悩みながらも、「スポーツには、自分がやることの楽しみもあるけれど、観戦する楽しみもあるよね」という話をしました。
 実際に、授業でオリンピックの映像を観戦したこともあります。それまで子供たちは、アニメばかり見ていましたが、「先生が好きだから、羽生結弦のニュースを見たよ」とか、「サッカーのワールドカップ、次はどこと対戦か覚えたよ。○○先生、見るでしょ」と、子供たちが話すのを聞いて、世界をちょっぴり広げる手伝いができたかな、とも思うのです。
 また、授業では、学校で購入した競技用の車椅子を使って、初めて自走できた子供がいました。自分で動いて参加する楽しさも、たくさん味わってほしいと思っています。
 同僚は、バスケットボールの県代表選手です。目の前でダンクシュートを決めてね!とお願いして、体育では、パスとシュートの学習を計画しています。どのように工夫すれば、子供たちが発揮できる力で競技の一番楽しいところを味わえるか、ワクワクしながら考えているところです。


・図書紹介
■次号予告
■編集後記