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肢体不自由教育 No.239
新学習指導要領と肢体不自由教育
―基礎から分かる新学習指導要領―
10年に一度の学習指導要領の改訂が行われ、次の時代に向かう教育の方向性が示されました。今回は、インクルーシブ教育システムの構築に向けた流れの中にあり、特別支援教育においては、小・中・高等学校と足並みが揃った箇所と、特別支援教育特有の箇所の、両方が見受けられました。 とはいえ、学校では、日々の指導においてどの程度学習指導要領が意識されているでしょうか。本特集号では、学習指導要領を、いちから理解していただくために、論説では、改訂作業の中心を担った、菅野先生と分藤先生に概要を執筆していただきました。 各論では、実際の指導場面をイメージしやすいように、Q&A形式で読み解きました。「新学習指導要領の要点」「授業をつくる」「今日的な課題」という三つの視点から、解説していただきました。 本号が、授業づくりの手立てとして、先生方の更なる理解の手助けにつながることを願っています。 (尾﨑美惠子) |
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- ・巻頭言
- 新学習指導要領の展開への期待
- 古川 勝也
西九州大学子ども学部教授
- ・論説
- 特別支援学校小学部・中学部学習指導要領の改訂の要点
- 菅野 和彦
文部科学省初等中等教育局特別支援教育課特別支援教育調査官
- 特別支援学校におけるカリキュラム・マネジメント
- 分藤 賢之
長崎県立長崎特別支援学校長
- ・特集のねらい
・新学習指導要領の要点(1)
- 「学習指導要領」はどのように改訂され、何が記されているのでしょうか。
- 尾﨑美惠子
千葉県総合教育センター研究指導主事
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・新学習指導要領の要点(2)
- 「育成を目指す資質・能力」とありますが、どのようなことを意味するのでしょうか。
- 一木 薫
福岡教育大学教育学部教授
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・新学習指導要領の要点(3)
- どのような授業を行えば、「主体的・対話的で深い学び」が実現するのでしょうか。
- 一木 薫
福岡教育大学教育学部教授
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・新学習指導要領の要点(4)
- 今回の改訂では、「知的障害者である児童生徒に対する教育を行う特別支援学校の各教科」(以下、知的教科)」が、詳しく細かく記載されています。なぜ、このように改訂されたのでしょうか。
- 徳永 豊
福岡大学人文学部教授
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・新学習指導要領の要点(5)
- 「自立活動の充実」とは、具体的にどのようなことなのでしょうか。
- 長沼 俊夫
日本体育大学体育学部教授
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・新学習指導要領の要点(6)
- 「学習評価」は、どのように変わるのでしょうか。
- 北川 貴章
国立特別支援教育総合研究所情報・支援部主任研究員
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・新学習指導要領の要点(7)
- 「社会に開かれた教育課程」が、肢体不自由教育とどのように関係があるのでしょうか。
- 長沼 俊夫
日本体育大学体育学部教授
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・授業をつくる(1)
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「学習指導案を作成する」ときに、学習指導要領をどのように用いればよいのでしょうか。
- 阿部 晴美
特定非営利活動法人地域ケアさぽーと研究所外部支援員
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・授業をつくる(2)
- 「各教科を合わせた指導」とは、どのような指導のことでしょうか。
- 吉川 知夫
国立特別支援教育総合研究所研究企画部総括研究員
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・授業をつくる(3)
- 児童生徒に「何をどのように指導するのか」を、どのように考えて決めたらよいのでしょうか。
- 宮尾 尚樹
長崎県立諫早特別支援学校主幹教諭
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・今日的な課題にせまる(1)
- 「特別の教科 道徳」を肢体不自由のある児童生徒にどのように指導すればよいのでしょうか。
- 庄司 伸哉
東京都立鹿本学園総括校長
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・今日的な課題にせまる(2)
- 「生涯学習」をみすえて、学校教育の段階では、何をどう指導することが必要でしょうか。
- 北川 貴章
国立特別支援教育総合研究所情報・支援部主任研究員
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・今日的な課題にせまる(3)
- 肢体不自由教育における「プログラミング教育」のポイントは、どのようなことでしょうか。
- 杉浦 徹
国立特別支援教育総合研究所情報・支援部総括研究員
・連載講座
- 算数・数学につながる数の指導(5)
加法と減法の文章題の指導/乗法・除法の指導
- 川間健之介
筑波大学人間系教授
- ・講座Q&A
- 教材づくり
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・小児リハビリテーションの基礎知識 5
子どもの学習活動を理解するための基礎知識
西方 浩一
文京学院大学保健医療技術学部准教授
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- ・ちょっといい話 私の工夫
- 肢体不自由のある生徒の指導における共通理解を図る工夫
―「週担カード」を活用した取組―
- 海老沢ひとみ
埼玉県立越谷特別支援学校教諭
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- ・読者の声
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- 合理的配慮の基礎となる環境整備
- 池田 和馬
秋田県立ゆり支援学校教諭
(秋田大学大学院生)
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私は現在、秋田大学教職大学院で合理的配慮とその基礎となる環境整備(以下、基礎的環境整備)について研究しています。その中で、多様な学びの場(小・中学校の通常の学級や通級指導教室、特別支援学級、特別支援学校)の見学や指導主事等指導的立場の方々へのインタビュー調査を行っています。 その調査の中で、「合理的配慮という言葉を耳にすることが多くなってきた」という状況がある反面、この言葉の難しさから現場での理解が進んでいない現実があります。また、「基礎的環境整備を、エレベーターやスロープなどハードの課題のみと捉えていること」が多いようです。 文部科学省による基礎的環境整備の項目には、ネットワークの形成や個別の指導計画の充実など、学校の創意工夫や自助努力でできる部分も多くあります。また、基礎的環境整備を充実させることで障害のある児童生徒はもちろん、その周りの児童生徒も学びやすい環境に繋がることを実感しました。 今後のインクルーシブ時代では、施設・設備や専門性が必ずしも十分とはいえない小・中学校等であっても、基礎的環境整備と合理的配慮の視点や考え方を咀嚼し、それらをセットして学校の中に浸透させることが求められます。そのことにより全ての子供が教育的ニーズに応じた教育を受けることができるようになればいい、そんなインクルーシブな学校が増えていくことを願っています。
できる力を大切に
- 煖エ 典子
静岡県立浜北特別支援学校教諭
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高等学校のソフトボール部の外部指導員をしていた時、右肘から先が欠損している生徒と出会いました。 当初その生徒のことを、他の生徒と同じようにできないだろうと決めつけていました。しかし、ある日のミーティングで、机が汚れているから拭くように全員に伝えると、その生徒が率先して雑巾を濡らし、右肘の付け根で雑巾を押さえ、左手で上手に絞り、机を拭いてくれたのです。 その時、私は今までの自分の対応は間違っていたと反省しました。「彼女を、他の選手と同じに考えることが大切なのではないだろうか。できないことや困ったことは、彼女自身が伝えてくれるので、その時に、一緒に考えていけばよいのではないか。」と気付きました。そして、それがきっかけで特別支援学校教諭の仕事に就きました。 特別支援学校に勤めた当初は、ついつい生徒に手や口を出し過ぎて、その生徒がやればできる力を奪っていたような気がします。その子は今何ができて、何ができないのか。将来どうしたいのか、先のことを考えていませんでした。 本誌や研修で認知や身体の発達段階について学び、実態把握をすることで、よりよい支援ができるようになってきました。特に「授業で生かす教材・教具の特集」は、一人一人の子供の発達に応じた教材・教具や環境づくりについて、日頃の授業を見直すよいきっかけとなりました。 私は電車通勤の時間に、特別支援教育に関する書籍を読むようにしています。それを基にして、学習の系統性を意識した授業づくりや、子供たちの将来について、同僚と語り合いたいと思います。
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- ・特別支援教育の動向
- 「第64回全国肢体不自由教育研究協議会(福岡大会)」の報告
- 島津 快忠
福岡県立築城特別支援学校長
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・図書紹介
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■次号予告
■編集後記
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