平成25年度の金賞・奨励賞の選考委員会は、5月11日に日本肢体不自由教育研究会の事務所で行われました。選考対象は、本研究会の機関誌「肢体不自由教育」の第205号から第209号までに掲載された19の実践報告です。選考委員会に先立ち、本研究会の評議員27名(肢体不自由教育第207号66ページ掲載)に、予備選考を依頼しました。22名の評議員から回答があり、その評価結果も選考の際の参考としました。選考の観点は、①独創性、②現状の課題解決に向けた内容・方法の充実、③研究の発展性・波及効果の3点です。
今回の予備選考では、評価が分かれ、多くの実践報告が金賞・奨励賞の候補に推薦されました。選考委員会では、研究会の方向性を示すことも選考の観点に加え、改めて全ての実践報告について検討しました。平成25年度の金賞・奨励賞は、次のように決定しました。
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金 賞
「小・中学校の各教科に準ずる教育課程における
障害特性に応じた目標設定と評価の改善」(第206号)
福島県養護教育センター指導主事(前福島県立平養護学校教諭) 菅野 和彦
奨励賞
「脳性まひ児の認知特性に応じた指導
―国語における視知覚障害への配慮― 」(第206号)
福井県立福井特別支援学校教諭 源甲斐 恵美
「小学校肢体不自由特別支援学級における各教科等を合わせた指導
―『学習到達度チェックリスト』を用いて―」(第208号)
佐賀県武雄市立北方小学校教諭 畑瀬 真理子
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菅野氏の実践報告は、福島県立平養護学校で、平成21年度から3か年計画で行われたグループ事例検討会の内容を整理したものです。教科学習における目標と評価について、先行研究に基づいた設定のプロセスが丁寧に記載されています。学習指導要領に則した各教科の評価規準を軸として、自立活動の視点や実態を考慮した上で、具体的な個に応じた評価基準(活動像)を作成し、授業を行い、評価し、授業改善を進める取組が示されています。今後、各学校で取り入れられることが必要な内容として高い評価を得ました。
源甲斐氏の実践報告は、脳性まひ児は、運動・動作面だけでなく、視知覚や認知特性にも困難さがあることを捉えた指導です。認知特性がLD児と類似することからLD児の指導法を取り入れ、個に応じて様々な工夫をした国語の指導を行っています。自立活動の時間の指導とも連携した3年間の継続した指導で、平仮名、片仮名、漢字を覚え、簡単な漢字の混じった文章を読むことができるようになりました。LD児の指導法を脳性まひ児の指導に活用することの有効性を示した優れた実践です。理論的にもきめ細かい実践として高い評価を得ました。
畑瀬氏の実践報告は、小学校の肢体不自由学級で取り組まれた実践です。「学習到達度チェックリスト」(徳永豊氏らが開発)を使って、実態把握を行い、適切な目標と指導内容を設定しています。「朝の会」(日常生活の指導)や「生活単元学習」の指導でのきめ細かい適切な指導を通して、「話すこと」「聞くこと」「量と測定」における学力の向上が確かめられています。他の肢体不自由学級での指導の模範になる内容として高い評価を得ました。
受賞した実践報告は、肢体不自由教育の方向性を示すものです。ここでは紹介できませんが、選ばれなかった報告も優れた内容であったことを付記いたします。
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