1.ハンドサッカー大会の起こり
今から十年程前、 東京都の肢体不自由養護学校の研究会 (略称‥都肢研) で顔を合わせたそれぞれの学校の教員が、 体育の授業で行われていた球技の話題から発展して交流試合を行ってみてはどうかという話しとなり実現に至ったのがこの大会のスタートです。 それ以前から各校では教員の創意工夫で様々な球技が行われ実践されていました。 それぞれのルールを統一させて生まれたのが現在行われているハンドサッカーです。 既存の集団スポーツを行うことが難しい子どもたちにとって、 ルール等が工夫されたハンドサッカーを行うことはとても楽しみなことの一つとなっています。
2.ハンドサッカーとは
ハンドサッカーとは様々な障害を抱える生徒が一つの種目に参加できるよう工夫された、 肢体不自由養護学校独自のスポーツです。 七人ずつのチームで競う集団スポーツであり、 そこにはチームで協力し合ったり助け合ったりという集団スポーツ特有の楽しさがあります。 加えて、 シュートの醍醐だいご味やゴールの楽しさが味わえることは、 この種目の大きな魅力の一つです。 また長年にわたって取り組まれてきたという経過の中で、 運動機能の差をこえて参加しやすいようにルールが工夫・整備されていて、 どんな障害の生徒も比較的参加しやすい種目になっています。
またハンドサッカーに取り組む中で、 作戦を考えたり、 お互いの役割を確認したり、 自分はチームの一員として何ができるか等、 障害の差こそあれ一人一人が考え行動することはとても大切なことだと思います。 勝った時のうれしさ、 負けた時の悔しさをチームとして受け止め、 生徒みんなの気持ちが一つになる経験は集団スポーツの持つ素晴らしさではないでしょうか。 このような、 子どもたちの内面の変化をハンドサッカーを通して感じることができるのです。
3.運営に携わって
学校活動から離れた有志 (生徒も教員も) の参加による大会としてスタートしてきましたが、 回を重ねる中で参加校も増えて大会が盛大になっていく一方、 それに伴って様々な問題を抱えながらの運営にもなってきています。 万が一の怪我に対する対処及び責任の問題、 教員が一ボランティアとしてかかわらざるを得ない状況、 参加校が増えたことによる会場確保の問題等々をクリアして、 子どもたちが楽しみな大会として毎年続けていける環境を整えることの重要性も指摘されています。 また、 この種目が学校だけでなく、 ゆくゆくは卒業後の余暇に行えるような、 生涯スポーツとして位置付けられていってほしいという願いもあります。 学校でスポーツを行う理由の一つに、 その活動を経験することで楽しさを感じ取り、 生涯にわたってスポーツに親しんでいくことへの土台作りという考え方も含まれています。 卒業後の生活を豊かなものにしていくためにも余暇活動を充実させるこ とは大切で、 ハンドサッカーもその一つとして貢献できるのではと考えられます。 学校生活の中で楽しさを自ら経験することは生涯スポーツへつながる第一歩ではないでしょうか。
そのためにもまずは学校活動の中にしっかりと位置付けて、 活動の基盤を整えること。 そしてルール等についても試行錯誤を重ねる中で現在に至ったように、 今後も参加する子どもたちの障害の状況等を考慮しながらルールの見直し・改善を行い、 一スポーツとして確立させていくことも将来を見据えた上での現在の課題と考えられます。
平成二年三月に二校間ではじまったこの大会も年々参加校が増え、 今年の三月に行われた第十一回大会には八校が参加するに至りました。 ハンドサッカーを多くの学校関係者に見て、 知って頂き、 「日ごろの授業に対して意欲的に取り組むきっかけ」 になったり、 「スポーツに楽しさを見いだすきっかけ」 になったり、 また 「卒業後の余暇の充実に向けての土台作り」 につながる等、 生徒にとって有意義な活動であることに賛同いただくことができ、 今日に至っています。 来年の三月には第十二回大会が開かれます。 新たに参加を検討している学校もあります。 今後も更にハンドサッカーの輪が広がって いくことを携わってきた者の一人として願わずにはい られません。
*大会及びルールの詳細等に関しては、 東京都立北養護学校 (03-3906-2321) 谷口までお問い合わせ下さい。
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