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障害の重い子供のコミュニケーション指導
―学習習得状況把握表(GSH)の活用―

小池敏英、三室秀雄、神山 寛、佐藤正一、雲井未歓 編著
 

B5判 286ページ

税別価格2,300円+税 ジアース教育新社

 東京都立の肢体不自由児を対象とする特別支援学校では、児童生徒の障害の重度・重複化に伴い、障害の特性を踏まえた小学部から高等部までの一貫性のある指導が求められています。しかし、「学級担任が替わると、以前の課題に戻ってしまった。」「学部が替わると、それまで培ってきた力が生かされない。」「12年間同じような内容を繰り返している。」などの意見が寄せられていました。
GSHの作成
 これらの課題の解決に向けた有効な手段として、東京都教育委員会がとったアプローチが、この学習習得状況把握表(以下、GSH)の作成でした。平成19年11月に策定された東京都特別支援教育推進計画第二次実施計画の中で、「肢体不自由特別支援学校における障害の重い児童・生徒への小学部から高等部までの一貫性のある指導に関する評価基準を作成するため、大学と連携した調査・研究を行う。」と、示されています。
 この調査・研究の連携先が、東京学芸大学教授小池敏英氏の研究室であり、この研究の中で開発されたのが、GSHです。本書には、このGSHについての詳細がまとめられています。
GSHの理論
 理論編では、障害の重い子供の学習の仕組みから、発達の道筋について、丁寧に記されています。ここでは、小池氏のこれまでの臨床研究に基づくGSH作成の理論的根拠が示され、GSHを活用するための理論が集約されています。
GSHの活用
 GSHによる評価は、15の学習項目を立て、この中から、「注意反応」と「快受容」、「期待反応の形成分化」を、特に重視すべき点として取り上げています。15の学習項目に合わせて、第1章ではGSHを利用した代表的指導、そして、第2章では指導事例を取り上げ、学校の中でどのように活用し、授業改善に役立ててきたかが、きめ細やかに書かれています。
根拠ある授業をするために
 GSHを用いることにより、重度・重複障害のある児童・生徒が、どの課題についてどの程度目標が達成されているのかが明示されます。これを引き継ぎ等で活用していくことにより、一貫性のある指導を推進していくことができます。
 GSHについて書かれた本書は、確かな根拠に基づいた一貫性のある指導の推進のための必読の書と言えます。

(東京都立府中けやきの森学園 泉 愼一)