この本は、植草学園短期大学で研修を行った3名の長期研修生による、「通常学級ユニバーサルデザイン」に関する研究を編集したものです。ユニバーサルデザインの基本的な考え方から、授業や教材作りまで、イラストや写真などでわかりやすく解説されています。
ユニバーサルデザインとは
第1章では、ユニバーサルデザインの意義や特徴について、次のように説明されています。
通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒の割合は、約6.5パーセントとされていて(文部科学省平成24年12月5日)、特別支援教育は共生社会の形成の基礎となるものです。学習上配慮を要する子どもにとって、「ないと困る支援」は、どの子にとっても「あると便利で・役に立つ支援」であるのが、ユニバーサルデザインの意義であり特徴なのです。
授業づくりの視点と具体的な工夫
第2章では、「導入の工夫」「多様感覚を生かして学べる場の工夫」「板書やワークシートの工夫」などを含む、七つの授業づくりにおける視点を挙げています。そして、それぞれの視点に対する具体的な工夫について、写真やイラストを用いて紹介しています。
例えば、「導入の工夫」では、次のような例が挙げられています。学習への苦手意識から授業のスタートラインに立てない児童がいます。そのような場合、クイズ形式で興味をもたせたり、フラッシュカードでテンポよく学習がスタートできるような工夫をしたりすることが有効なことなどです。
第2章の後半では、国語科と算数科の実践例が挙げられています。指導計画や授業展開例などが具体的に掲載されています。
また、「MIM読み名人テスト」などを用いたアセスメントや、授業後のアンケートによる評価の分析などが紹介されており、先に挙げた七つの視点を授業づくりに生かすことの有用性について、研究的な視点でまとめられています。
さらに、第3章では学校研究への展開についても述べられています。
一目でわかる活用のしやすさ
第4章では、学級づくりや授業づくりの提案がリーフレット形式でまとめられています。視覚支援の工夫や指示や話し方の工夫など、一つの項目がA4判1枚に収まるように整理され一目で内容を理解することができます。
本書は通常の学級での活用を想定した内容となっていますが、特別支援教育の基礎をわかりやすく解説しているため特別支援学校においても十分に活用できます。タイトルにもあるように、「今日からできる」活用性の高さが素晴らしい一冊です。
(埼玉県立熊谷特別支援学校 内田 考洋)
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