「授業改善」は、ここ数年、多くの学校で取り組まれているテーマです。
編著者の飯野順子氏(特定非営利活動法人地域ケアさぽーと研究所理事長)は、「これからは、授業の質の向上を問う時です。」と本書で述べています。では、授業の質を高めるためには、どのような点に気をつけたらよいのでしょうか。
授業改善10のポイント
本書の第Ⅰ章では、「授業改善10のポイント」が、分かりやすく紹介されています。このポイント2「骨格のしっかりした根拠のある授業を創る」では、児童生徒が何を学ぶのかを明確にして、目標を設定することの必要性を挙げています。例えば、「見通しを持つ」「期待感を持つ」という文言ではなく、「○○を見通す」「○○を期待する」等、具体的な活動を記述することが、評価につながっていくことを指摘しています。このように、本書では、目標を修正した結果、授業の意図がより明確になった事例が紹介されています。
また、ポイント4「シンプル、スリム、ストレート(3S)の授業づくり」では、授業の中で教員の言葉数が多いことを指摘し、3Sの授業づくりのために必要な視点が例示されています。「学習環境の設定」では、教員が独りよがりの授業をしないために、留意しなければならない事項が挙げられていて、大変参考になります。
質の向上を目指す実践例
第Ⅱ章では、実践事例が7つ紹介されています。
ある特別支援学校(肢体不自由)小学部の事例として、人との関わりを広げる力を育むために、国語の授業の実践を紹介しています。授業の中で、「国語としての言語理解」だけではなく、「キャリア教育の視点から見た言語理解」にも着目し検討を重ねた事例です。授業者は、グループの教員間で、児童への言葉のかけ方(「もう一回やる?」)や関わり方を統一したことで、児童が安定した表出をするようになったと評価し、表出の読み取りや丁寧にフィードバックをすることの大切さを実感したと述べています。
どの事例でも、指導の過程や使用した教材等が、写真や表、図で分かりやすく紹介されているので、授業の様子がよく伝わってきます。
各教科等を合わせた指導
第Ⅲ章では、分藤賢之氏(文部科学省初等中等教育局特別支援教育課特別支援教育調査官)が、「肢体不自由教育における各教科等を合わせた指導の基本的な考え方」について、学習指導要領等を踏まえながら丁寧に解説しています。分藤氏は、「児童生徒に何を期待して、各教科等を合わせた指導を行っているのか、まずは原点をしっかりと振り返ってほしい。」と述べています。
日々の授業づくりの「道しるべ」ともなる貴重な一冊です。ぜひ、お手元においてご活用ください。
(筑波大学附属桐が丘特別支援学校教諭 竹田 恵)
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