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臨床動作法
―心理療法、動作訓練、教育、健康、スポーツ、
高齢者、災害に活かす動作法―

成瀬 悟策 著
 

A5判 220ページ

本体価格3,000円+税 誠信書房

 動作法は、脳性まひ児者の肢体不自由改善のために、著者らが1960年代から研究と臨床を重ねて発展させてきた、心理的な援助の技法です。動作を心理的な視点で分析し、「こころ」という主体的な力によって「からだ」を動かすことを動作と定義しています。
 すでに動作法を学校での指導に活かしている先生も多くいらっしゃると思います。改めて、動作法を深く勉強したいと思っている方や、動作法を多様なケースに用いることを試みている方には、手放せない一冊になると思います。

動作法とは
 第1章及び第2章では、動作法の基礎的な説明が書かれています。
 筆者が動作に着目した理由や多くの心理臨床の経験から、「こころ」と「からだ」の関係に従来とは違った新しい視点を提供することになった経緯を、わかりやすくまとめています。
 また、動作法の見立てや課題の進め方などについて、心理療法として用いる場合を例に説明しています。そのため、クライエント、インテークといった、カウンセリング等で用いられている用語で説明されている部分もあります。学校で使われている言葉に置き換えて読むことで、読者は理解をより一層深めることができます。

動作法のさらなる発展
 筆者は、「心理療法だけでなく、もっと広く心理的な臨床場面において動作法はどのように役立ち、
どう適用できるか考える」と記しています。「考える」と記した理由を、動作法がはじまってようやく半世紀が経ったばかりであり、そのすべてを尽くすことは無理であるためと、筆者は述べています。このことからも、動作法のさらなる発展を追究している、筆者の強い思いが読み取れます。
 第3章以降は、健康、教育、スポーツ、高齢者、災害に動作法を生かす視点で、各領域での適用についての有効性が記されています。これまでも、各領域で動作法を活かした取組は行われ、文献等でも紹介されてきていますが、本書では、筆者が各領域に動作法を用いるようになった経緯や最近の取組を交えながら書かれています。

教育的視点からの動作法
 本書では、新生児からの子育てや教育活動について、「動作」という視点から述べられています。
 例えば、子供たちの学習場面の姿勢の重要性は言うまでもありませんが、どのように指導を行えばよいかについて、悩む先生方も多いと思います。本書では、歩行、立位、椅子座位、正座、あぐら座の姿勢を中心に取り上げて、重力に対応した姿勢の取り方や保ち方、修正の仕方のポイントが書かれています。
 この他にも、日々の学校での指導に活かせ、多くの示唆が得られる内容が盛り込まれています。ぜひ一読することを勧めます。

(国立特別支援教育総合研究所 北川 貴章)