情報パッケージ「ぱれっと(PALETTE)」とは、「手厚い支援を必要としている子どもの実態把握、教育目標・内容の設定、また、評価などに関して、教育関係者に役に立つ情報を、パッケージとして提案する」ものです。本研究会でも、平成28年度から夏の研究大会でセミナーとして紹介しています。
この本は、実態把握、保護者との連携・専門職との連携、目標設定と教育内容、学習活動の展開、評価と計画の見直しの五項目に分け、21×22センチメートルとコンパクトサイズでイラストを多く取り入れつつ、多くの情報がぎっしりと詰まっています。
重度・重複障害に限らず、様々な子供を想定
この本では、指導や支援を考える際の基本的な考え方を紹介するだけでなく、4人の架空の子どもたちを登場させ、一人一人に合わせた指導・支援を考える具体的な事例を紹介しています。この本が指導対象と想定している「手厚い支援を必要としている子ども」について、重度・重複障害のある子どもとは限っていません。登場する子供たちも医療的ケアが必要な重度・重複障害、視覚障害・知的障害・肢体不自由を併せもつ、聴覚障害・知的障害を併せもつ、知的障害・自閉症を併せもつ子どもと、障害の状況だけでも様々です。
目の前にいる子供一人一人の教育について考えるヒントの提供
この本は、具体的な事例を紹介していますが、「こうすればできます」というマニュアル本ではありません。
読み手であろう教職員一人一人の目の前には、それぞれ実態が異なる児童生徒がいます。環境や実態が異なる子供たちの現在と将来を支えるために適切な指導・支援も、それぞれ違うはずです。この本は、読み手の目の前にいる子どもに最適な指導・支援を考えるために、必要な情報や考え方を提供することを目指しています。
本書の活用方法
この本では、架空の事例として様々な障害をもつ子どもが登場します。そのため、読者の目の前にいる児童生徒に似ている子どもの事例を参考に指導・支援を考えることもできます。しかし、その際には、事例と目の前の児童生徒の違いをきちんと意識し、慎重に指導・支援を検討することが求められます。
逆に言えば、この本は、取り上げている事例以外の幅広いケースに活用することをしっかりと想定している本です。そのため、幅広いケースへの対応が求められる、学校全体での研修や研究に活用することは、特に有効です。本書208ページには、研究協力校での活用の仕方について紹介しています。学校研究を推進する立場や、個別の教育支援計画の作成について説明する立場での活用のヒントになります。
(山梨県立甲府支援学校 保坂 美智子)
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