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見て分かる意思決定と意思決定支援
−「自分で決める」を学ぶ本−

[執筆]志賀利一・渡邉一郎・青山均・江國泰介・勝田俊一
[漫画]中尾裕次
 

A4判 116ページ

本体1,800円

ジアース教育新社
 私たちがよりよく生活を送るためには、日々の中で起こる様々な事柄に対して、適切な意思決定をすることが大切です。これは、知的障害や発達障害のある人にとっても同様です。本書は、「見て分かるシリーズ」として、軽度の知的障害や発達障害のある方々が、利用しやすいように工夫して書かれています。意思決定を行うための細かなプロセスや、具体的な支援例などが、漫画等も用いて分かりやすく解説されています。
意思決定とは
 意思決定とは、「何かを行おうとしたときに、いくつかの選択肢の中から、もっとも目的に合ったものを選ぶ行為」である、と第1章の冒頭では述べられています。何かを決めようとした時に、具体的な選択肢がいくつかある場合に、どの選択肢がより目的に近いものかを判断することが重要です。そのような意思決定を行う場を「意思決定会議」として、意図的に設けることが有効であるとしています。また第1章では、年代別で直面しやすい意思決定の内容なども示されており、どのような場合に、会議を行うことが有効であるのかも解説されています。
意思決定の場の設定
 第2章では、意思決定支援の流れについて解説されています。進め方として、準備段階では対象者の気持や希望の聞き取り、要望の整理などを行います。そして会議の参加者を選出し、役割を分担します。実際の意思決定会議の流れは、「スタート」「拡げる」「比べて絞る」「決定する」の4段階で行うとされています。 
 「スタート」では、対象者が気持や希望を伝えやすい雰囲気を作ること。「拡げる」では、客観的情報や合理的情報を多く集めること。「比べて絞る」では、選択肢を2から3個に絞り、それぞれの良い点や悪い点などを考えて検討すること。「決定する」では、対象者に決定させることや、決定後の手続きやリスクへの対処方法を確認することなど、各段階においての具体的な配慮方法が細かく述べられています。また、第二章の最後には、意思決定会議を行う時に使用する「支援シート」が付属しており、すぐにでも、会議で使用できるようになっています。
漫画による分かりやすい事例
 第3章と4章では、余暇とお金のやりくりに関する問題、グループホームで暮らすための段取り、転職や遺産相続など、具体的な事例が示されています。漫画を用いて実際に意思決定の場を、読者が体験することができるようになっています。
 第五章では、「支援者チェックリスト」や「支援者側が意思決定会議の質を振り返るポイント」が書かれています。
 このように本書は、軽度の知的障害や発達障害のある方々が、支援者と一緒に活用できるように、様々な工夫が凝らされています。

(埼玉県立熊谷特別支援学校 内田 考洋)