この本は、肢体不自由教育の今日的なテーマについての基礎的な考え方、実際及び豊富な実践例で構成されていて、この教育の経験の浅い人にも分りやすくまとめられています。どの実践も肢体不自由養護学校での実践例で、学校の実態に応じて様々な工夫がされています。読んですぐに、自分の実践に生かすことができる内容です。
本書は、全国肢体不自由養護学校長会が編集しているので、実践例が豊富に掲載されており、特に、医療的ケアの実践事例は参考になります。発刊に当たっての趣旨の中に「肢体不自由教育の専門性がこれまでになく求められている今、児童生徒のより良い人生の基礎・基本を築くために、関係者が協働し合いたいものと思います。」とあります。このような視点で編集されたため、先進的で工夫された、児童生徒の生き生きした表情まで伝わってくる事例が多いようです。概要を紹介します。
第1章 個別の指導計画
第1節 基本的な考え方と実際
なぜ今、個別の指導計画なのか、個別の指導計画作成の課題と意義がまとめられてい ます。
第2節 実践事例
個別の指導計画を整備するための学校組織の在り方、授業計画への生かし方や保護者 との連携、指導の実際について、学校毎の工夫が述べられています。
第2章 総合的な学習の時間
第1節 基本的な考え方と実際
総合的な学習の時間が設定された背景、生活単元学習との違いと評価、実践例が載っ ており、指導計画を作るときの参考になります。
第2節 実践事例
各地のユニークな指導が紹介されています。
第3章 コミュニケーション支援
第1節 コミュニケーション支援
肢体不自由養護学校でのコミュニケーションの基本的な考えとインリアルアプローチ とAACの基本について述べられています。
第2節 重度重複障害児のコミュニケーション支援
児童生徒のほんの小さな表現や変化を見逃さない教師の目と工夫が大切なことを痛感 しました。
第3節 情報機器を活用したコミュニケーション支援
第4節 コミュニケーション支援のアイディア
第4章 医療的ケアの必要な児童生徒の学校生活
第1節 基本的な考え方と実際
これまでの十数年の経過や課題の推移、実態調査そして文部科学省の「護護学校にお ける医療的ケア体制整備事業」の解説が、分りやすくまとめられています。
第2節 特殊教育における福祉・医療との連携に関する実践研究校からの報告
各研究指定校での体制作りから実際の指導までがまとめられており、医療的ケアの教 育的な効果にも言及し、どこの実践でも学校生活の質が向上したことが取上げられてい ます。
第3節 子どもを主体に、子どもの立場からの医療的ケアを
学校で医療的ケアの体制を整備する際に大切にしたい視点が述べられています。
東京都新宿区立新宿養護学校 阿部 晴美
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