摂食指導の基本的な考え方にはどのようなポイントがあるのでしょうか。また摂食指導と言語指導とは、どのような関係があるのでしょうか。本書は「コミュニケーション発達支援シリーズ」として、特別支援学校(知的障害)での教育に携わる教員向けに書かれています。 著者である坂口しおり氏は、本書の冒頭で知的障害児の摂食指導と肢体不自由児の摂食指導の違いを述べています。また、発声・発語と食べることの関係性について、口唇や舌、息等の機能向上に向けた取組の中で、噛む力や口唇のスムーズな動きにつながることについても触れています。そして、それらは、イラストや写真等を用いて分かりやすく解説されています。
摂食指導の基礎知識 第1章では、特別支援学校(知的障害)における摂食指導の基本的な考え方として、特別支援学校(肢体不自由)との方向性の違いが述べられています。特別支援学校(肢体不自由)では、「少しずつ食べられるようになる」という方向で、他方、特別支援学校(知的障害)では、「今の食べ方を上手にしていく」「必要に応じて食べ物の形態や食べ方を変えていく」という方向で、摂食指導を考えていくとよいとしています。 また、特別支援学校(知的障害)での摂食指導で大切にすることとして、4点のポイントが示されています。その他、チャートで摂食の課題を4点に分けて紹介しており、指導の参考になるものです。
障害による弱さの理解
第2章では、子供たちの摂食の課題、それを踏まえた指導の方向性について述べられています。ここでは、障害種別に、摂食時に見られる様々なつまずきについてまとめられています。つまずきと原因、結果と配慮事項が、表により分かりやすく掲載されています。改めて、障害による弱さを理解する機会となります。 また、食形態についても触れられており、基本的な食形態の紹介と解説がなされています。食形態の見直しや変更についても、摂食機能の評価から摂食相談、そして食形態の変更の手続きについても詳しく述べられています。どのように指導を進めていくべきか、悩んでいる先生方のヒントになります。
摂食機能を高める言語指導
第3章では、発声・発語と食べることの関係性について触れられています。筆者は、上下口唇や舌、息のコントロール、表情筋を動かすことは、食べることに影響を与えると述べています。課題となる発語と摂食指導の共通性を紹介しながら、「なぜ言語指導なのか」を分かりやすく解説しています。 学校での実践が分かりやすく紹介され、若手の先生方にも理解しやすい内容と構成になっています。よりよい実践のための入門書として活用できる一冊です。
(埼玉県立川島ひばりが丘特別支援学校 渡邉 文俊)
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