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子供が学びを深める授業
―新学習指導要領で目指す授業づくりと発達障害通級指導の実践事例―
長澤 正樹・高木 幸子 監修 新潟大学教育学部附属特別支援学校 特別支援教育研究会 編著 |
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B5判 102ページ |
本体価格1,800円+税 |
ジアース教育新社 |
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平成29年3月に告示された小学校学習指導要領では、新しい時代を生きていくために必要となる「資質・能力」を、学習する子供の視点に立って、「知識・技能」「思考力・判断力・表現力等」「学びに向かう力・人間性等」の三つの柱で整理しています。また、この「資質・能力」を育むためには、「主体的・対話的で深い学び」を実現させていくことが必要であることが示されています。 本書では、「主体的・対話的で深い学び」が実現される授業の具現化を図るため、「知的障害のある子供が学びを深める」とはどういうことであるのかが、実践事例を交えて詳しく丁寧に解説されています。
子供が学びを深める授業
第1章の理論編では、「子供が学びを深める」とは、「子供が思い描いたことを実現する過程で『学びの価値』を感じ、高めていくことである」としています。本書が示す「学びの価値」は、子供が学習活動に対して見出す目的意識に応じて示されており、学習活動に対する「楽しさ」「良さ」「大切さ」の三つの要素が関係しています。 「楽しさ」とは、活動自体に目的意識(この活動は楽しい)がありそれに取り組むときの思いであり、「良さ」とは、活動の結果に目的意識(○○のためにやろう)があり、それに向けて必要感を持って取り組むときの思いであり、「大切さ」とは、実生活に目的意識(これは、大切だからやろう)があり、活動に必要感をもって取り組むときの思いであるとされています。 子供が学習活動に対してどのような目的意識を持つのかに着目し、学びの価値(楽しさ・良さ・大切さ)を感じられる授業を構想・実施していくことが大切です。 本書は、単元の序盤で子供の興味・関心を最大限に生かした学習活動を、中盤では「学びの価値」を十分に感じることができる学習活動を、終盤では子供の発展的な思いに応える学習活動を設定することを提案しています。 第2章で紹介されている実践事例は、それぞれの単元で子供に味わわせたい「学びの価値」が、「楽しさ」「良さ」「大切さ」のいずれであるのか、単元の序盤・中盤・終盤のそれぞれの段階でどのような活動が設定されたのかが、明確に示されています。
発達障害通級指導教室について
第3章では、新潟大学附属特別支援学校の発達障害通級指導教室が紹介されています。読み書き計算等に困難のある子供を対象に、個別指導で学習に取り組む教室と、人とのかかわりに困難のある子供を対象に、グループ指導で集団活動に取り組む教室です。第4章で示されている具体的な事例の中には、読者が「こんな子いる!」と思うものがきっとあることでしょう。 読者に対して、担当する子供の「主体的・対話的で深い学び」と明日の授業を考えさせる一冊です。
(東京都立水元小合学園 武部 綾子)
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