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肢体不自由教育における子ども主体の子どもが輝く授業づくり2
―研究活動は子どもがワクワクする「しかけ」のある授業を生み出す―

飯野 順子 編著
 

B5判 255ページ

本体価格2,600円+税

ジアース教育新社
 本書は、本誌第236号の図書紹介で取り上げた「肢体不自由教育における子ども主体の子どもが輝く授業づくり」の第2弾です。どのようにして日々の授業を振り返り、改善するかに焦点を当てるという点では共通しています。その上で、今回は副題にあるとおり、授業改善の基盤となる研究活動の場面も含めて情報提供をしています。
 各校の研究の成果物や授業の様子をカラーで紹介しています。そのため、授業内容や使用する教材が分かりやすいだけでなく、児童生徒のワクワク感も伝わってきます。

教師のワクワク感は子供に伝わる
 本書は、6章に分かれています。Ⅰ章で授業づくりについての総論が述べられた後、Ⅱ章とⅣ章で研究活動と授業づくりをセットにした実践報告、その間に挟まれたⅢ章で、近年増加しているポスター発表のより伝わりやすくなる方法について、紹介しています。
 副題には『「しかけ」のある授業』とありますが、この本に登場する研究活動も、教職員全員が主体的に参加するための「しかけ」を多く盛り込んでいます。参加する教職員の反応をとらえて、研究活動をより活性化するために、研究の方法を改善していきます。そのため、チームで児童生徒について話し合ったり、教材を作成したりすることを楽しんでいる姿が見えてきます。この教師のワクワク感が児童生徒に伝わり、子供のワクワク感を生んでいるように見えます。

医療的ケアにチームで取り組む
 続くⅤ章で扱う医療的ケアの取組紹介も、研究活動とセットになっています。近年、人工呼吸器など高度な医療的ケアが必要な児童生徒が増加し、各校でも様々な検討が行われています。その中で、教師と学校看護師がどのように協働していくことが望ましいのかについて、考える一助になります。
 さらにⅥ章では、島田療育センターの日中活動支援「ほっとステーション」を紹介しています。ここでは、学校を卒業した青年期以降の利用者の生きがいや自己表現の機会をつくる取組をしています。これらの取組は、障害の重い児童生徒の今後の生活を考えるヒントとなるだけでなく、現在の授業づくりや環境設定を見直すきっかけにもなります。

授業づくりを楽しむ本
 本書は、日々の授業づくりに追われる若手教師には、子どもたちの笑顔や主体的な活動を引き出す授業づくりの参考になります。また、チーム運営を担う中堅教師には、チームで授業を作り上げる楽しさを共有するための工夫がつまっています。さらに、校内の研究活動を推進する立場のベテラン教師にとっても、他の実践から自校の実践を考える手立ての一つとなる本です。

(山梨県立甲府支援学校 保坂美智子)