|
知的障害特別支援学校の自立活動の指導
下山 直人 監修 全国特別支援学校知的障害教育校長会 編著 |
|
B5判 161ページ |
定価 本体1,800円+消費税 |
ジアース教育新社 |
|
多様な事例
学級担任をしているA君の、摂食指導がなかなかうまく進まず、困っている時に、偶然にこの本を手にしました。 目次を見ると、第2部実践編第1章、「健康の保持」事例①「口腔機能の改善を目指し、流涎コントロール向上に向けた指導」が、目にとまりました。 早速ページを開くと、(1)対象者の実態把握、(2)指導課題の整理と項が進んでいました。流涎コントロールのための指導課題の整理として、機能面、認知面などの五つの観点をもとに、指導課題の整理がされていました。その観点に対して、流涎コントロールのためのアプローチや具体的な対応が考えられていました。 口腔機能改善のための個別の指導計画も示され、学校生活全体で指導が行うことが示されていました。私はA君の指導も、この事例を参考にして、指導課題を整理し、摂食指導だけではなく、学校生活全体で指導を行うように、指導計画を立て直しました。 第2部には、自立活動の内容の区分ごとに、12の事例が掲載されており、障害種別を問わず、参考になる事例が多々あります。自立活動の指導は内容ごとに行われるのではなく、内容に示された項目を組み合わせて、具体的な指導内容を設定して行うこととされています。本書では、あえて、指導の中心になった内容ごとに紹介することで、読者が参考としたい事例にたどり着きやすいように編集されています。
第1部 理論編
順番が逆になりましたが、第1部理論編を読み進めました。第1章の「自立活動の概要」では、自立活動の教育課程上の位置づけ、目標、内容及び授業時数等、自立活動の指導を考える上での基本的事項が取り上げられています。これは、すべての障害種別の特別支援学校に共通することです。自立活動の内容の取扱いを、カレーライスに見立てた図などで大変わかりやすく解説してあります。 また、〈参考〉として、「養護・訓練」から「自立活動」への変更の過程や、自立活動の内容の変遷が掲載されており、自立活動のこれまでの歴史も興味深く読みました。個別の指導計画等の作成過程が詳しく示されていることも、大変参考になります。 平成29年に改訂された学習指導要領から、小学校と中学校でも自立活動という言葉が登場しています。第3部では、特別支援学校のセンター的機能を果たす観点から、小・中・高等学校で自立活動の指導をする際に押さえておきたいことをまとめてあるとともに、小・中・高等学校での指導事例が掲載されています。 障害種別に関わらず、自立活動を学び直すことができる一冊です。
(東京都立墨東特別支援学校 武井 純子)
|
|
|