特別支援学校においては、性に関する指導の授業の機会が少ない学校が、多いのではないでしょうか。しかし、小学部から高等部まで、成長の著しい学齢期の児童生徒を対象としている特別支援学校では、限られた機会しかない、性に関する指導の授業の充実は、大変重要だと言えます。 本書は、千葉県立柏特別支援学校が、千葉県教育委員会の研究指定を受けて取り組んだ、2年間の実践研究をまとめたものです。
新学習指導要領に対応した目標の整理と授業改善の考え方 第1章では「解説編」として、性に関する指導の授業について、大切にしたい考え方がまとめられています。特に、性に関する指導の目標を、「子どもたちが身につける資質・能力」として捉え、新学習指導要領の3つの柱で整理されています。また、機会が限られた性教育の授業において、目標を達成しなかった児童生徒へのフォローを、「PDCAサイクル」の一環と捉えて、個別に応じたフォローの実施を大切にしています。
明日からの授業に使える豊富な授業の紹介
第2章では「実践編」として、小学部から高等部までの合計20事例について、指導略案とワークシートが掲載されています。具体的には、小学部では、公共トイレの利用方法や入浴方法などについて、中学部・高等部では、保健体育や職業等の授業で、思春期の体の変化や、性のトラブルへの対処方法などについて、取り上げられています。すべての単元において、イラストが豊富で、具体的なワークシートを利用しながら、授業が紹介されています。
ワークシートを通した保護者との連携
本書では、新しい考え方として、「保護者も性教育のカウンターパートに!」を提案しています。「性教育の授業の一端を担っていただく存在」として、保護者との連携を大切にしています。本書で紹介されている事例で作成されるすべのワークシートには、保護者との連携部分が設けてあります。授業で使用したワークシートを保護者が読み、感想や家庭における工夫、悩みなどを記入する欄を設けることで、学校と家庭が一緒になって、子どもの自立を目指す取組を目指しています。 本書には、CD‐ROMが付属されており、紹介されているワークシートやイラストデータのみならず、保護者宛の文書例や、プレゼンテーションソフトで作成された教材も、収録されています。 明日からの授業に役立つ指導略案と、ワークシートの具体例が充実しているため、保健体育担当の先生方のみならず、12年間の系統性を意識した指導・支援を行うためにも、小学部の先生方にも、参考となる1冊となっています。
(青森県教育庁学校教育課特別支援教育推進室 島津 裕子)
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