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発達支援と教材教具Ⅳ
―「席を立つ」子どもへの認知発達に応じた合理的配慮―

立松 英子著
 

A4判、106ページ

本体価格1,900円+税

ジアース教育新社
 著者である立松英子氏は、平成元年に設立された研究団体の障害児基礎教育研究会で幹事を務めています。障害児基礎教育研究会では、「子どもは常に学ぼうとしている」や「コミュニケーションがうまくいかないときは、相手のことを理解できないこちら側に要因がある」などを信条として、活動しています。
 本書は、2009年に刊行された「発達支援と教材教具―子どもに学ぶ学習の系統性―」からの4冊目の図書で、5つの章で構成され、第1章では、本書の理論的背景を丁寧に解説しています。また、「席を立つ理由を発達的視点からの考察」「教材教具を通して働きかけたときの気づき」が、各章のなかで具体的に紹介されています。
発達論的立場と行動論的立場の融合
 第1章では、本書の理論的背景が解説されています。発達的視点だけで子ども見るのではなく、子どもの行動を行為の前後から分析することで、良い結果を導く手立てを探すことなどが、理論的背景をもとに述べられています。
大人と子どもの理解のギャップ
 子どもが席を立つ瞬間には、「課題が合わない」「分からない」という理由があります。しかし、これを子どもからの発信である、と気付けることは少ないのではないでしょうか。第2章では、複数の事例をもとに、子どもの理解の仕方と大人の理解の仕方にはギャップがあることを、写真とともに具体的に解説しています。
定型発達児に学ぶ
 心理検査では、十分な検査結果が得られない子ども、時間をかけた検査に応じることが難しい子どもについては、標準的な検査を使うことができません。第3章では、「太田ステージ評価」と「鳥の絵課題」を活用した、事例とタイプ別の状態像を解説しています。また、太田ステージ評価に合致する定型発達児の行動観察を裏付けとして示しています。
外界に向けて感覚をひらく
 第4章では、障害児基礎教育研究会で開発、制作した教材教具の紹介、教材教具を通しての働きかけ、が述べられています。言葉や文字、数の機能の発達だけが学習ではありません。自分と他者(外界)の区別が難しい子どもの場合は、外界に向け感覚をひらき、外界の刺激に気付くことも学習です。
無シンボル期からシンボルが獲得される段階へ
 子どもの望ましくない行動について、「厳しく指導するのか、(それを)受け入れるのか」「(それを)許すか許さないか」といった議論になりがちです。「どうするべきか」という大人の価値観に基づいた議論ではなく、行動の背景は何か、事実に基づいた方針を立てる必要性が述べられています

(栃木県立那須特別支援学校 落合 正彦)