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障害の重い子どもの発達理解ガイド
――教科指導のための「段階意義の系統図」――

徳永 豊・田中 信利 編著
 

A5判、76ページ

本体価格1,000円+税

慶應義塾大学出版会
本書は、『障害の重い子どもの目標設定ガイド』の続編として刊行されました。
自立活動を主として指導する教育課程に在籍する児童生徒の指導では、指導の段階や系統性を検討することが困難であることは、指導に携わっている多くの先生方が経験していることです。しかし、その困難さを乗り越えて、指導の段階や系統性を検討しなくては、指導が積み重なりません。
本書は、子どもが学ぶとは何かを考え、学びの状況を把握することの重要性を詳しく解説するところから始まります。そして最後に、発達段階の意義を踏まえた、教科の目標設定と指導の実践が紹介されています。

子どもにとっての「学び」とは何かを考える
第1章では、障害の重い子どもにとっての「学び」とは何か、どのように学ぶのか、「学び」が成り立つ条件などが解説されています。また、障害のある子どもの「学び」の特徴を踏まえて、どのように目標を設定し、指導内容を選択するのかが、検討されています。

定型発達の理解が不可欠
第2章では、目標設定の基礎となる子どもの学びの状況把握では、何を参考にどのように実施していくのか、基準となる「枠組み」や「ものさし」の必要性が、述べられています。

発達的特徴、様相を知る
第3章では、乳児期における幼児の発達の概要と重要な節目とされる時期を取り上げ、発達的特徴が概説されています。また、障害による発達の影響を踏まえた実態把握と目標設定を、どのように考えていくか、が詳しく述べられています。

「発達的特徴」と「障害特性」
第4章では、「Sスケール」の理論的支柱の解説と、Sスケールによる行動項目の一覧である「学習到達度チェックリスト」が紹介されています。

発達段階の意義を活用した実態把握と目標設定
第5章では、複数の子どもの事例が、Sスケールを用いて紹介されています。また、事例ごとに、発達段階の意義と目標設定のポイントが詳細に解説されています。

多様な視点での実態把握
第6章では、事例を基にして、「受け止め・対応」、「表現・要求」、「見ること」、「操作」など、多様な視点での実態把握が述べられています。同様に、これらの視点を基にした指導目標と指導内容・方法の設定が、それぞれ述べられており、実態把握からの一連の手続きを学ぶことができます。
教科指導との接点を見い出すことが難しい児童生徒の学級担任である先生にも、ぜひ一読してほしい図書です。

(栃木県立那須特別支援学校 落合 正彦)