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いのちのカプセルにのって
岡田なおこ著 |
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B5判 121ページ |
本体価格1,600円+税 |
汐文社 |
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マモルとあかりちゃん
この本は、児童書です。犬のマモルが、お母さん犬のおなかの中にいるところから物語が始まり、マモルの目を通して語られていきます。マモルは、お母さん犬のおなかの中で近所の子供たちの声を聞き、手の感触を感じ、一人一人の子供のことを覚えました。わかば学級にいるあかりちゃんのことも知りました。
マモルは、他の二匹の赤ちゃん犬と一緒に生まれました。あかりちゃんは赤ちゃん犬のお世話をするようになり、犬の飼い主のわんわんおじさん夫婦に、色々なことを話し始めます。おじさんは、あかりちゃんに赤ちゃん犬が生まれるときの動画を見せて、「お母さんのおなかの中には、赤ちゃんを包むカプセルがある。宇宙のずっと遠くから、カプセルに乗って、来たと思っている。」と話します。
手足が不自由なあかりちゃんは、「私のカプセルは不良品だね」と言いますが、おじさんは「カプセルにいい・悪いはないよ。形や種類が違うだけさ」と諭します。
あかりちゃんは、マモルを飼うことになり、ある日、散歩に出て、シルバーカーを押しているおばあさんに出会います。
おばあさんは身体が不自由で、学校に通えなかったことを話し、あかりちゃんを抱きしめて、「自由がきかないのはつらいね。くやしいわね。かなしいわね。その気もちは、母ちゃんにも、わからんのよ。父ちゃんになんか、わかるもんか!」と言います。
著者のこと
障害のある辛さは、両親にも分からないと書ける著者は、どんな人でしょうか。著者の岡田なおこさんは、全身にマヒがあり、中学校まで肢体不自由の養護学校(当時)で学んでいました。言語障害があり、話すことよりも文章で気もちを表すことの方が得意だったそうです。高校は受験して、東京都立の高校に進学しました。本書の他にも、「薫ing」「ひなこちゃんと歩く道」などの著書があります。
岡田さんの養護学校時代を知る方は、彼女はとても自立心が旺盛で、頑張り屋だったことを覚えていらっしゃいます。
この本は、岡田さんが自宅の前にできた児童館の子供たちと、交流を続ける中で作った、私家版絵本『ボクはあかりのマモル≠セよ』をベースに、読み物として出 版されました。初めは小さい子供と接するのは苦手だった岡田さんが、「こうなったら、子供たちの仲間に入れてもらうしかない。だんだんに私のハンデも理解してくれるだろう」と、一歩踏み出した気もちが込められていると思います。
子供たちと一緒に読める本です。
岡田さんのホームページ【なお小箱】も、是非ご覧になってください。
(東京都立墨東特別支援学校 武井純子)
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