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なければ創ればいい! ―重症児デイからはじめよう!―

鈴木 由夫/一般社団法人全国重症児者デイサービス・ネットワーク 編著
 

A5判 172ページ

本体価格1,800円+税

クリエイツかもがわ
子供たちの楽しみ
学校の下校時刻が過ぎ、スクールバスが発車し終えると、複数の放課後デイサービスの車が入ってくるというのは、筆者が勤務している学校の下校の風景です。都市部かどうか、また、自治体により違いはあると思いますが、全国的に障害児の放課後デイサービスの数は増えています。
学校とは違って、学年や学部を越えた友達との活動や、スタッフの方々との交流を、子供たちはとても楽しみにしているようです。その中に、医療的ケアの必要な児童生徒が通う、放課後デイサービスもあります。
本書は、重症児デイサービスを自ら立ち上げた母親たちのエピソード5編と、実際に重症児デイサービスを立ち上げるときに必要な、手続等について、具体的に記されています。登場する母親たちは、いずれも「どうしてこんなに頑張れたのだろう」と、目をみはるような経験をされています。

保護者の願い
医療的ケアの必要な子供を育てていくことは、何よりも時間の余裕がなく、片時も保護者が子供のそばを離れられないケースもあります。夜もまとまった睡眠がとれず、仮眠で過ごし、日中は家事もしながらの育児となります。我が子を預かってほしいと思っても、医療的ケアがある重症心身障害児は、看護師がいないと預かってもらえないという現実があります。「だったら、自分たちで創ろう」と声をあげた人たちがいます。
また、親亡き後の、我が子の未来はどうなるのだろうという不安をかかえ、「だったら、我が子が地域で幸せに暮らしていける仕組みづくりをしよう」と、立ちあがった人たちがいます。
その人たちを後押ししているのが、一般社団法人全国重症児者デイサービス・ネットワーク(以下、重デイネット)の代表理事である、鈴木由夫氏です。重デイネットでは、重症児デイサービスを立ち上げようとしている人たちへの、相談業務を行っています。

注目したい動機
重デイネットが支援する際に、注目する立ち上げの動機は、@重症児の母親として、A自分の資格を生かしたい、B困っている人の役に立ちたい、の3点にまとめられるといいます。しかし、支援は決して信条論だけではなく、経営としてやっていけるかという視点を見失わずに行われます。
本書を読んで、「自分もいつかこんな事業のお手伝いができないだろうか」と思いました。また、各ページに掲載されている子供たちの笑顔は、どれも飛び切りにいい笑顔です。これまで送り出すだけだった放課後デイサービスを身近に感じることができました。

(東京都立墨東特別支援学校 武井純子)