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インクルーシブ教育システム時代の就学相談・転学相談
一人一人に応じた学びの実現を目指して

宮崎英憲 監修  市川裕二・緒方直彦 企画・編集
全国特別支援教育推進連盟 編著
 

B5判 212ページ

本体価格2,750円(税込)

ジアース教育新社
 本書の監修者である宮崎英憲氏は、本書の対象読者として次のような方々を意図していると記しています。教育委員会等相談担当や小・中学校の特別支援教育コーディネーター、特別支援学校就学相談担当、障害のある子どもの保護者です。また、全ての障害種を想定した内容が書かれています。
 そのため、本書は就学相談等に関わる様々な立場に合った読み方ができます。ここでは、肢体不自由児・者を教育する特別支援学校の教員の立場から本書を紹介します。

相談のポイントを紹介
 第二章「就学相談の実際」では、具体的取組やポイントの紹介をする項目があります。そこでは、障害ごとに必要な事柄を整理しています。例えば、医学的観点からの把握については、知的障害・発達障害(神経発達症)と、肢体不自由の二項目にわけて示されています。
 これらは、既に各校で設定している観察のポイントや保護者への聞き取りの項目を再点検する際の参考になります。また、様々な障害を併せもつ子どもが対象となる可能性を考えると、他の障害の就学相談のポイントを知っておくことも大切だと感じました。

保護者の声を紹介
  宮崎氏は「あとがき」で、「どの部分から読んでもらっても、就学相談・転学相談に関する実際的・具体的な内容が分かりやすく記述されている。」と記しています。その中でも、第五章「障害のある子どもの保護者・支援者の声」が目を引きました。
 本章では、実際に就学相談を経験した保護者やその支援者五名が、自身の経験談やその経験を踏まえたよりよい就学相談を目指した提言を語っています。就学先の検討にあたり不安を抱いている保護者を、どのように支えるかを考える際に、非常に参考になる資料だと感じました。

就学相談等に関するQ&Aも
 就学相談は、チームで行うものです。しかしながら、そのメンバーの教育経験は様々であることも多く、初めて就学相談にあたる教職員に対して、その職務内容等をどのように伝えればよいのか、戸惑う場合もあるかもしれません。
 本書では、各章で押さえておきたい法的根拠を整理するとともに、第六章「就学相談・転学相談Q&A」として、10個のよくある質問に対して回答を示しています。例えば、「保護者が小学校卒業を機に特別支援学校中学部への就学を望んでいる場合の、学校としての対応について教えてください。」等は、よく出会うケースだと思います。
 各学校において、よりよい就学相談を目指すうえで、本書は強い味方になることでしょう。

(山梨県立甲府支援学校教諭 保坂美智子)