本書は、「障害のある子供の教育の手引〜子供たち一人一人の教育的ニーズを踏まえた学びの充実に向けて〜」(文部科学省初等中等教育局特別支援教育課、令和3年6月)と、「小学校等における医療的ケア実施支援資料〜医療的ケア児を安心・安全に受け入れるために〜」(文部科学省初等中等教育局特別支援教育課、令和3年6月)をまとめたものです。この一冊で、障害のある子供の教育的ニーズを整理するための考え方など、教育相談を行う際の基本的な考え方を把握できます。
教育相談のモデルプロセスを提示
第二編では、「事前の相談・支援」「法令に基づく就学先決定の手続き」「就学後の学びの場の見直し」に分けて解説しています。市町村教育委員会との連携が求められる就学相談担当者にとっては、一連の流れを理解する上で、必読です。
特に、第四章「就学後の学びの場の柔軟な見直しとそのプロセス」では、「小学校(特別支援学級)から特別支援学校への進学」「特別支援学校から小学校(通常の学級)への転学」など、具体的な取組例を掲載しています。これにより、初心者にも就学相談の流れが分かりやすくなっています。
障害種ごとに教育的対応を提示
第三編では、第一編で示した教育的ニーズの内容を障害種ごとに具体的に示しています。
「W 肢体不自由」の項目を例に挙げて見ていきます。ここでは、肢体不自由のある子供の教育的ニーズを解説した後、教育的ニーズを整理するための観点として、肢体不自由の状態等の把握(医学的側面、心理学的・教育的側面)、特別な指導内容(姿勢、感覚の活用等)、合理的配慮を含む必要な支援の内容(教育内容・方法等)について解説しています。これらは、教育相談において、子供に関する情報を整理する際の参考になります。
また、教育相談では、「この子にあった学びの場を知りたい」という保護者の声をよく聞きます。その際には、「肢体不自由のある子供の学校や学びの場と提供可能な教育機能」の項目が参考になります。
このような情報が、他の障害種についても示されています。特別支援学校(肢体不自由)に関わる子供の多くが、知的障害や病弱・身体虚弱等の重複障害児です。教育相談でも多様な障害に対応することが求められます。どの障害種についても、基本的な障害理解についてから解説しています。また、近年相談が増えている医療的ケア児についても、別冊として掲載されています。
本書は、多様な関係者と連携し、情報共有する際に、強い味方になるでしょう。
(山梨県立わかば支援学校ふじかわ分校教諭 保坂美智子)
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