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障害の重い子どもの授業づくり 最終章
―授業改善への道筋を照らす指導・助言のコツ―

飯野順子 授業づくり研究会T&M 編著
 

B5判 186ページ

本体価格2,200円+税

ジアース教育新社
 本書の編著者である飯野氏は、その冒頭で「人生の基盤をつくるために、学校に求められているのは『学ぶ喜び・楽しさ』を学校時代にしっかり身に付けられること」と述べています。好評のシリーズの最終章となる本書は、専門性の高い授業づくりについて、また、人生の基盤をつくる生涯学習の視点での授業づくりについて、多くの示唆を与えてくれるものです。

第一章 授業改善への道筋を照らす指導・助言のコツ
 本章の第一章では障害の重い子どもの授業づくりについて、飯野氏自身の教師観が述べられ、これに続いて、授業づくりのポイントが8点示されています。そして「子どもたちは学びたいと思っている、先生たちが『授業づくりが楽しい』と思って元気で自信をもって子どもたちの前にたってほしい」、そのために「授業は完成度80%でスタートし、実践的指導力を発揮して、授業を練り上げていきましょう」と提唱されています。
 飯野氏に続いて、8人の指導教諭が語る「授業論」には、それぞれの先生のそれまでの学びの過程や授業に対する考え、自校の授業力向上の取組が紹介されています。読者が自分の授業を思い浮かべたとき、「なるほど」「たしかに」と頷くような記述が満載の内容です。

第二章 生涯学習の推進 学校卒業後の学びの実際 〜それぞれの成長
 第二章では、学校卒業後の活動について、まず全国の「訪問カレッジ・訪問大学」で学ぶ学生の様子が、その支援者側の立場から紹介されています。高等部卒業後も学び続ける学生の姿からは、飯野氏が記す「生きることは、学ぶこと。学ぶことは生きる喜び」「学校時代は、生涯学習の基盤をしっかりつくる時」の言葉の具体例を知ることができます。
 これら学習を支援するスタッフの記述もさることながら、後半に示される保護者の言葉は、学齢期の教育を担う、学校の先生方にぜひお読みいただきたい内容です。執筆者の1人、倉本氏は「今、大人になった息子が新しい学びを積み上げられるのは、学齢期に築かれた、将来を想定し培った確かな土台があるからだ」と記しています。日々、目の前の子ども達の授業づくりに励む読者は、このような言葉に身が引き締まるような、勇気付けられるような気持にさせられることと思います。
 「毎日の授業の積み重ねが、生涯にわたる学ぶ喜びをつくる基盤となることを認識することが大切です」と、飯野氏は記しています。タイトルの通り、障害の重い子どもの授業づくりに、たくさんのヒントを与えてくれる1冊です。

(東京都立光明学園 武部綾子)