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動作訓練の技術とこころ
―障害のある人の生活に寄りそう心理リハビリテイション

香野 毅 著
 

B5判 221ページ

本体価格2,200円+税

遠見書房
 本書は、自立活動の指導などでも広く活用されている動作法について学ぶことができる1冊です。著者の香野毅先生は、30年にわたり、障害児への動作訓練の実践を積み重ねていらっしゃっています。本書には、その経験や最近の知見を踏まえて、動作訓練の理論・技法や実践の進め方が凝縮されています。またコラムなどでは、エピソードを交えながら筆者の気づきや動作訓練に対する熱い思いなどが語られていて、動作訓練の魅力が伝わってきます。

動作訓練とは
 タイトルを見てみると、「動作訓練」と記されており、「なんで動作法ではないんだろう?」と思われた読者の方もいらっしゃるかと思います。まず本書のタイトルである「動作訓練」の定義や理論について分かりすく説明されています。そして、動作訓練の中核となる「姿勢」「動作」「リラクセーション」「タテ系」の各論に関する基礎的・基本的事項については、まず肢体不自由者を中心に分かりやすく説明されています。肢体不自由者を対象に開発された動作訓練は、研究や臨床の蓄積によってその対象に広がりを見せており、本書でも発達障害のある方への動作訓練の進め方などについても、障害特性を踏まえながら取り上げています。
 また、動作訓練の技術について論じている章では、基本的事項をおさえつつ、相手に合わせて柔軟に変更する技術を身に付けることの意義が語られています。このことは、幼児児童生徒個々の実態に応じた指導が求められる特別支援教育において、教師が授業に活用する際の重要なエッセンスであり、自己の指導を省察するためにも必見です。

動作訓練の進め方
 動作訓練は、学校の指導に活用されている他に、学校教育とは別に、訓練会を組織して、定期的に活動が展開されています。
 本書では、動作訓練の進め方について、訓練会での事例を中心に取り上げられています。実態把握からどのように訓練課題を設定したか、また実際の訓練がどのように展開され、どのような変容が見られたかなど、一連の訓練過程について、写真解説の他に、情景が浮かんでくるような描写で分かりやすく紹介されています。この事例を通じて、学校での指導に動作訓練を活用する際のポイントを学ぶことができます。
 自立活動の専門性が問われている今、日々の指導を振り返り、自己の専門性を追求する際に役立つ一冊になるかと思います。是非、手元に置いてご活用ください。

(国立特別支援教育総合研究所 北川貴章)