私は、特別支援教育コーディネーターとして、作業療法士や言語聴覚士等と連携して他校からの相談に応じています。皆さんの学校でも、理学療法士や心理士等と連携し、校内指導の充実に向けて尽力されていることと思います。連携の際には、各専門家の得意分野の違いの理解や生かし方の工夫が必要になることがあります。
この本では、このような多職種連携を進めるために必要な事項を解説しています。また、様々な立場の方から多くの事例が紹介されています。
互いの理解を深めるために
第1章では、特別支援教育と専門家との連携の経緯と配慮点について論じています。そこでは、教育課程や指導目標、指導内容について説明し、連携する専門家の方に理解していただく必要性が示されています。しかし、どのように説明すればよいか悩むこともあります。
その場合は、ぜひ第2章を参考にしてください。ここでは、特別支援学校、特別支援学級、通級による指導それぞれの教育課程や指導内容について、図表を多く取り入れわかりやすく解説されています。専門家との打ち合わせの際に、一緒に見ることで説明しやすく、相互理解が深まりそうです。
専門家との連携の事例
地域の学校の先生と事例検討をした際に、「教員には、自分たちだけで何とかしようと抱え込む傾向がある。」と言われたことがあります。これからの教員には、専門家の得意分野等を理解し、必要な助言を得るコーディネート力が求められます。
第3章では、特別支援学校・特別支援学級・通級による指導・通常の学級それぞれと、様々な専門家との連携の事例が多数紹介されています。書き手も教員だけでなく、理学療法士、作業療法士、心理士、視能訓練士、歯科医、スクールソーシャルワーカー等、様々な立場の方が執筆されています。
これらの事例は、専門家のコーディネートをする際に、より適切な対応をする一助となります。
また、第4章には、保護者の方々による経験を踏まえた提言が盛り込まれています。
専門家と共により良い指導を
各専門家と連携してより良い指導・支援を行うために、2つのことが大切だと痛感しています。1つは、法的根拠を含めて学校(特別支援教育コーディネーターの場合は、自校だけでなく、相手校についても)のできること、できないことを、専門家に理解していただくことです。もう1つは、学校側が各専門家の専門性を理解し、学校の指導・支援に生かすことです。
この本は、これらを上手に進める際に、参考になる一冊です。
(山梨県立わかば支援学校ふじかわ分校 保坂 美智子)
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