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かゆいところに手が届く 重度重複障害児教育
松元 泰英 著 |
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B5判 180ページ |
本体価格2,300円+税 |
ジアース教育新社 |
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実践的な内容
「私は『小学校』から異動してきたので、重度の障害がある子供の教育のことがまだ、よくわからないんです。何か参考になる本があったら、紹介してください。」と、同僚から相談されたときに、この本が思い浮かびました。
重度重複障害児の教育には、教科指導や自立活動の指導、医療的ケアの知識やスキル、姿勢の管理、補装具の知識、ICTの活用、摂食指導など、多岐にわたる内容があります。特別支援教育を専門とする教師を目指して、大学で学んできても、学校現場でこの現実に直面すれば、困惑する方も多いことでしょう。
本書に先立って、『目からウロコの重度重複障害児教育』(ジアース教育新社、2018年)が上梓されています。「これ一冊読めば、重度重複障害児に対する教育が何とかなるというコンセプト」で書かれましたが、実践的な内容があまり記載されていないという反省から、続編として本書が企画されました。
本書の特徴は、次の3点です。
1 子供の疾患別に指導内容を書いてある。
2 医療の専門的な用語を極力省き、分かりやすいことばで説明してある。
3 多くの写真やイラストを活用することで、具体的で分かりやすい。
隙だらけの先生を目指して
著者は中学校の理科の教員から、35歳の時に養護学校(当時)の教員になりました。養護学校への転勤を希望するに当たっては、ずいぶん迷ったということです。そんなときに、県の研修で、養護学校に隣接する施設を見学する機会に恵まれました。見学の当日、施設の案内をした養護学校の教員が、笑顔で子供たちに話しかけている姿に驚きます。なぜなら、当時の荒れた中学校では、生徒に笑顔を見せることは「隙を見せる」こと、生徒に隙を見せてはいけないという時代でした。
見学した施設では、笑顔の先生に子供たちが近づいてきます。その子供たちに、さらにこれ以上ない笑顔で話しかける先生の偽りのない姿を見て、著者は「隙だらけの先生を目指そう」と、養護学校への転勤を決めたそうです。
以来、著者は特別支援教育に携わり、現在は大学で特別支援教育を目指す学生の指導に当たっています。このような著者だからこそ、重度重複障害児の教育に対するしっかりとした考え方の上に立って、実践で何が必要なのかを示すことが出来るのだと思います。
短下肢装具の履かせ方まで記載してある、まさにかゆいところに手が届く一冊です。
(東京都立墨東特別支援学校 武井 純子)
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