先生方の中で、次のような思いや経験をしたことはありませんか?「タブレットPCを使うと便利そう」「分かってはいるけれど、子どもの実態よりもタブレットPCに子どもを合わせてしまっている」「行き当たりばったりで使ってしまっている」。このような思いや経験から、一歩ずつ歩みを進めていくためのヒントとして、本書は作られています。本書は、学校で多く使われているタブレットPCであるiPadを中心に、iPadの基本機能、肢体不自由のある子どもにとって役立つ機能であるアクセシビリティやアプリケーション、実践事例等を解説・紹介しています。
様々な機能や設定の紹介
1章では、iPadの基本機能として、機器の選定から購入後の初期設定・便利な使い方について、詳しい説明がされています。
2章では、アクセシビリティについて紹介されています。具体的には、液晶画面のタッチ感度を調整する・背景色を変更する・子どもの音声で操作する等の設定方法があり、肢体不自由のある子どもに合わせた細かい設定が紹介されています。また、URLやQRコードが随所に盛り込まれており、詳しい解説を補足しています。
3章では、アプリケーションの解説がされています。例えば、「ドロップトーク」といって、音声言語によるやりとりが苦手な子どもに対して、音声表出を代替してくれるアプリで、その使い方が説明されています。
4章では、iPadを扱う際の固定方法、誤入力を減らす方法、提示方法、外部スイッチの利用について等の工夫が紹介されています。
実践事例について
事例は10ケースあり、障害の重い子どもの学習から教科指導でのiPad活用について幅広く紹介しています。ここでは、障害の重い児童の音楽の授業の実践を紹介します。iPadにAVplayerHDとiOAKというアプリをインストールして、肩掛け型スピーカーやピンポイントスイッチ等の複数の機器をiPadにつなげて音楽の授業を実施しました。iPad等のICT機器を活用して授業を行った結果、左手の指の動きが随意的である可能性が見いだされたとしています。子ども自身が分かる授業や、その学習評価に役立つ事例です。
本書に記載された内容は、時間と共に古くなる情報ですが、機能が変わっても同じ考え方で活用できる情報でもあります。ぜひ、本書をお読みいただき、日々の教育実践のヒントにしていただければと思います。
(千葉県立四街道特別支援学校 山田 康朝)
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