この本の置き場所は、いつでも手が届き、すぐにページを開ける場所にすることをお勤めします。毎日の指導の中で、目の前の子供の健康をどう維持していけばいいだろうか、と考えることは多いと思います。そのような時には、迷う前にすぐにこの本を開き、実践につなげていくのが、この本を活用するコツだと思います。
「第1章 健康観察・健康管理のために」では、障害児にとっての健康についてや、健康観察の留意点や観点、健康診断や施設環境整備などの健康管理について書かれています。
「第2章 日常生活における介助の基本」では、介助の基本的な考え方と介助者の心構えについて書かれた後、具体的な介助方法を解説しています。介助方法の解説は、写真が多く挿入され分りやすくなっています。この部分を読む前に、この章に含まれている「関係性やコミュニケーションを育てていく介助」を読むとより理解しやすくなるでしょう。 「第3章 特別な配慮を要する活動」では、プール指導と宿泊学習への参加について書かれています。どのような障害がある子供でも、これらの活動に参加できるようにするための環境整備や配慮点について書かれています。
「第4章 配慮を要する疾患」では、てんかん・筋緊張亢進・排泄障害・水頭症・心臓疾患・筋ジストロフィーについてその対応も含めて書かれています。また「てんかんとその対応」では、てんかん発作の分類や疑似発作、日常や学校生活における対応、抗てんかん薬の種類や使い方、などについて書かれています。
「第5章 摂食・嚥下障害とその対応」は、本書の約三分の一を占め、摂食機能の正常発達や、機能の評価・診断、具体的な摂食指導・訓練について書かれた「摂食・嚥下障害」、具体的献立レシピが多く取り上げられている「食物調理の実際」、誤嚥をどう把握し対応していくかについて書かれた「誤嚥への対応と経管栄養」に分かれています。
「第6章 口腔ケア」では、様々な口腔疾患とそれに対するケアについて書かれていると同時に、生活リズムや日常生活習慣の重要性についても書かれています。
さて、私も先日、勤務校が変わって初めてのプール指導を行う際に、通常学級と同じプールをどう使用していくか、考えていた時期がありました。その時に、保護者からこの本を紹介され、「障害の重い子供のプール指導」のページを開きました。そして、適切な水温や入水時間、評価方法などを再確認して指導に臨みました。理解していたことを再確認し、あいまいになっていた点を明確にした上で指導することで、子供と接する際の気持の余裕にもつながり、よりよく子供の様子を観察することにもつながる、と実感しました。 この本は、障害児教育に関わる学校の教員だけでなく、地域社会の中で障害児を取り巻いている医療、福祉など様々な分野の人々の実践の手助けになることでしょう。
東京都大島町立大島第一中学校 川崎 美智子
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