昨年、私は肢体不自由教育に関わる研修会で、本書の一部を参考にして講義を行いました。参加された先生方から、次の感想をいただきました。
「初めて、肢体不自由の生徒の学級担任となり、障害についてよく分かっていなかったのですが、これまで断片的に聞いていた知識が整理されました。」「肢体不自由と一言で言っても、その内容は細かく、深く、専門的な知識も必要だということが改めてわかりました。学んだことを実際の現場に活かせるように復習をして活用していきたい。」
本書には、現職の先生方にとって、学んだ知識をつなげやすく、実際の指導に活かしやすいという特徴があります。
知識・人・機会を「つなぐ」
シリーズ第2巻(肢体不自由教育)として刊行された本書のコンセプトは、知識・人・機会を「つなぐ」ことです。
令和4年7月、文部科学省から「特別支援学校教諭免許状コアカリキュラム」が示されました。本書は、教師をめざす学生のカリキュラムのうち、肢体不自由教育の教育課程・指導法(第二欄)を中心に構成されています。その内容は、特別支援教育の制度や基本的な考え方(第一欄)と関連づけて学びやすくなっています。
学生向けのテキストという一面に加えて、教育実践に活かすためのヒント等が散見され、現職の先生方の新たな学びや主体的な学びにつながる内容になっています。まさに、冒頭の感想の通りです。
厳選された構成内容
第T部では、肢体不自由教育の歴史・制度にについて整理されています。肢体不自由教育が現在直面している課題を、他国の歩み・制度や、過去の資料・データから分析されています。
第U部では、授業設計と指導の実際について、第V部では、教育課程の編成とカリキュラム・マネジメントについて、それぞれ解説されています。肢体不自由のある子供の教育課程や指導法に関わる基礎的な内容が厳選された中核となる部分です。また、心理、生理及び病理についての記述もあり、理解を深めることができます。
第W部では、今日的課題と展望として、関係者間での協働のあり方や今日の教師に求められる専門性について解説されています。今の自分に何が身につき、次に何を学ぶかを把握し、行動に移すことが大切であるとして、省察を通して、新たな気づきを得る姿勢が求められていると言えます。
本書は、日々学び続ける教師(の卵)の知識をつなぐことで、実践場面に活かすことができる書籍となっています。ぜひ、手元に置いて、積極的に活用することをお薦めいたします。
(千葉県立四街道特別支援学校 山田康朝)
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