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この子らしさを活かす支援ツール3

小倉靖範監修
愛知教育大学附属特別支援学校編著
 

B5判 128ページ

本体価格2,000円+消費税

ジアース教育新社

 本書は、2012年刊行「この子らしさを活かす支援ツール―子どもの豊かな生活の実現をめざして―」2013年刊行「この子らしさを活かす支援ツール2」の続編です。前書からの10年の間に作られた支援ツールについて、活用の様子や作成のポイントなどを紹介しています。

 第一章で「この子らしさ」に注目して支援ツールを作成することの意義を整理し、その後、第二章では生活面、第三章では学習面で活用している五三の支援ツールを紹介しています。

「この子らしさ」をとらえる視点

 本書の冒頭では、「この子らしさ」をとらえるために、以下の四つの視点を紹介しています。@目線の動きや動作の規則性、A好きなこと、得意なこと、夢中になっていること、Bその子の思い、C到達度や達成度。

 これらの視点から「この子らしさ」をとらえた上で、目標を設定し、その目標を達成するための支援ツールを作成します。本人ができることを取り入れ、環境を整えることで意欲を高め、「できた」「わかった」を実感できるようにします。児童生徒が主体的・自立的に活動するために支援ツールが不可欠、との考えです。

支援ツール作成の意義

 支援ツールがあれば、すぐに目標を達成できるというわけではありません。必要な支援を行うことで成果が表れます。そのため、各支援ツールの紹介では、使用する児童生徒の「この子らしさ」「この子らしさを活かす工夫」とともに、児童生徒が使用する様子を教師の言葉かけなどの指導の様子とともに紹介しています。活動する様子を見守り、支援ツールを最適なものにすべく試行錯誤する過程で、児童生徒をより深く理解することができます。ここに「みんなのため」ではなく、「この子のための支援ツール」であることの意義がある、と本書では考えています。

作成のポイントとアレンジ案

 読者が目の前の児童生徒の「この子らしさ」を活かす支援ツールを作成するためには、掲載された支援ツールをそのまま真似るわけにはいきません。前述した四つの視点で「この子らしさ」をとらえて、目標設定と支援ツールづくりをする必要があります。

 そのため、各支援ツールの紹介では「作成のポイント」とともに、「こんな工夫もできるよ」として、アレンジ案も紹介しています。様々な支援ツール例を紹介しており、身近な児童生徒に似た事例を参考に、最適化するべく試行錯誤することが大切です。

 本書をきっかけにして、児童生徒の理解を深め、成長を促していただければ幸いです。

(山梨県立わかば支援学校ふじかわ分校 保坂美智子)