筑波大学特別支援教育教材・指導法データベース選集3となる本書は、選集1〈教科編〉、選集2〈自立活動編〉に続くシリーズの完結編となります。読者の中にはこれまでの選集1や2を手に取られた方や、「筑波大学特別支援教育教材・指導法データベース」(以下「データベース」)を活用したことのある方もおられると思います。筑波大学は、大学附属の学校として、視覚障害・聴覚障害・知的障害・肢体不自由・知的障害を伴う自閉症に関する特別支援学校の五校を有しており、先のデータベースでは、この附属の特別支援学校五校で活用されている教材・指導法が多く発信されています。
インクルーシブ教育システムの構築のために
本書及び「データベース」の最大の特徴は、冒頭の「発刊に寄せて」で、雷坂氏が記しているように「単なる教材の紹介のみならず、教材を活用するねらいや指導場面、効果、配慮事項等を写真や映像とともに明確に解説している点」にあります。
障害のある児童生徒の指導に携わる読者の皆さんは、本書の特徴の価値に共鳴されることと思います。「こんな教材があったら」「こういうことをどう教えればいいか」と考えるときには、そこには児童生徒の姿があり、何かを教えたいという教師の強い想いがあります。単に教材一つでそれらが解決できるわけではなく、その教材を「どのような子に、どう使って、どのように教えるか」が大切です。
本書では、データベースの教材が提供校以外でも活用されていることに触れ「『〇〇障害』という視点だけではなく『〇〇しにくい』という子どもの学習の難しさに基づいて、教材を検索し、見つけた教材を指導法を参考に工夫しながら、子ども一人一人に合った教材を活用するという視点が大切でないか」と述べられています。
紹介される教材や論説・コラム
本書の教材は、ねらいや指導目標、指導場面等に基づき、「思いを伝える」「見やすさ」「手や指の動き」「分かりやすさ」「交流(スポーツ)」「健康管理・安全・環境」の6つのカテゴリーに分けて紹介されています。選集1や2と同様、見開き2ページに一つの教材を取り上げて、@教材がそれぞれの指導の中で、どのような目的や内容で用いられるのか、A教材の特徴、B用意する物・材料、準備、C使用方法や応用的な使い方、教材のアレンジや工夫等が示されており、大変見やすい構成になっています。
論説やコラムも、我々が授業計画をたてたり、教材を活用したりする際の参考になります。ぜひ選集1、2、データベースとあわせて、児童生徒の学習の難しさに寄り添う手立てを、数多く見つけてください。
(岩手大学 武部綾子)
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