日本肢体不自由教育研究会ヘッダー
 

特別支援教育の基礎・基本 第4版

独立行政法人 国立特別支援教育総合研究所 著
 

A4判 344ページ

本体価格2,700円+消費税

ジアース教育新社

5年ぶりの改訂

 本書の初版は、2009年に刊行された「特別支援教育の基礎・基本」です。以来、2015年、2020年の2回の改訂を経て、今回の改訂で第4版の刊行となりました。

 特別支援教育の制度が始まったのは2007年でした。本書の初版が刊行されたのはその2年後です。それ以降、20年弱の間、特別支援教育を取り巻く状況は、大きく動き続けてきました。

 2017年に、幼稚園や小学校の学習指導要領の改訂に続き、特別支援学校の幼稚部教育要領と、小学部、中学部学習指導要領も改訂されました。2024年度で、高等部を含むすべての学年で、新学習指導要領が実施になったことを1つの区切りとして、本書第4版は刊行されました。

 更に、2021年9月に文部科学省から出された「障害のある子供の教育支援の手引」と、新たに施行された「医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律」の内容が踏まえられています。

各障害に応じた教育の基本

 第T部の特別支援教育の基礎では、第1章共生社会の形成に向けたインクルーシブ教育システムの構築、第2章インクルーシブ教育システムの構築のための特別支援教育の推進に続き、第3章では特別支援学校の教育の概要について、解説されています。障害種別に子供への対応が簡潔に述べられています。

 肢体不自由のある子供への対応については、子供の実態等を考慮した多様な教育課程を工夫して編成・実施することが明記されています。

 第4章小学校・中学校における特別支援教育では、「4 幼稚園等や高等学校における特別支援教育」が、新たに項立てされています。幼児期での個に対応した特別支援教育の重要性と、高等学校がこれまで培ってきた個別的な指導・支援の観点を活かしながら、一人一人の生徒への指導・支援の充実を図っていく必要性が述べられています。

 第U部各障害に応じた教育の基本では、視覚障害、聴覚障害、知的障害、肢体不自由、病弱・身体虚弱、重複障害、言語障害、情緒障害、発達障害の九章で構成されています。障害種別ごとに、その障害の基礎知識と実態把握、教育課程、各教科等の指導、進路指導と進路状況、自立活動の指導、情報機器等の活用等の項目ごとに、整理されています。

 特別支援教育を網羅した解説といえます。近年は、障害のある子供の担任であるなしにかかわらず、特別支援教育に関する理解は、すべての教員に求められています。

 現在、教育に携わっている方たちと、これから教員を目指そうとする方たちすべてに、活用していただける内容であると思います。

(元東京都立墨東特別支援学校 武井純子)